不完全な魔女
人間の大きさで帰宅すると、ムッとした顔をしたカリフが腕組みをして立っていた。
「俺のいない間に厄介なことになってしまったようだな。」
「カリフ・・・どうして?」
「俺の本来の使命は何だった?」
「監視者。って・・・まさかずっと見てたの?」
「ああ、おやゆび姫のおまえの服を用意したのは誰だった?」
「あっ、服に魔法がかかってたのね。」
「そうだ。服がモニターがわりってわけ。
まぁ、服を全部脱いで何かしらやってることまでは、見えないけどな。
で、おまえはもう故郷にはもどりたくないということか?」
「それは・・・。」
「カリフ!なぜ、俺とチェルミが付き合うことが故郷にもどれないことになるんだ?
俺がわかるように説明してくれないか?」
ディルバは真剣な目をしてカリフに詰め寄った。
「いいだろう。チェルミは魔法の国の王女なのはわかってるな。
現在は罪を償うために流刑され、人間の世界に来た。
自力脱出できないように半分の魔力を引き抜かれてな。
この世界から魔法の国や別の世界へ移動する場合、かなりの魔力がないと移動はできないし、行き来するとなると高度な魔法力やテクニックが必要になる。
仮におまえとチェルミが結婚したとして、ありきたりな家族になろうとすれば、チェルミが魔力を捨て、人間となってここで暮らすか、魔法の国以外の世界でやっていくかの選択になる。」
「魔法の国ではやっていけないということか・・・。」
「そうだ。魔法の国は魔法使い以外の種族を受け入れる慣習はないし、目覚めたときから魔法を使う生活があたりまえなんだ。
しかも、人間の配偶者との間にできた子どもに魔力がなかったとしたら、その子どもは即刻人間界に追放になるか、死産の扱いとされる。」
「殺されるっていうのか・・・。なんてこと!」
「しかも、国王はチェルミの20才での審査でもどってくるものだと信じている。
兄妹たちも、チェルミの罪のことは言っても、憎んでいるわけじゃない。」
「じゃ、ミレイお姉さまは私のことを憎んでないの?そんなことないよね。
あんなに怒ってたもの。みんな、私のことをなじったもの。」
「チェルミ。俺は昨日まで、王宮に行ってきていろいろ調べてきた。
じつはな・・・君の家族はみんなミレイのフィアンセが悪人だってことを知っていた。」
「なんで?あいつが悪いのを知っていてどうして、私が罪人にされたの?
なんで、ミレイお姉さまが私を憎んでまで、追放したの?」
「王、王妃、長男、長女は魔法世界に危険を感じたときは皆の先頭に立って、守らなければならないし、原因を究明する責任がある。
そしてその下の血族の皆様は何らかの理由で王室の血が絶えぬように生き抜くことが絶対とされている。」
「わざと、チェルミを追放したんだな。チェルミの両親と兄と姉は何かと戦っているのか?」
「先生だけあって察しがいいな。
大なり小なり、外敵というのはどこの国でもあるものだが・・・今、魔法の国を悩ませているのは、ひとりの妖精だ。」
「妖精?おとぎ話なんかに出て来るやつら・・・?」
「人間の絵本に出て来るヤツみたいなのもいるが、妖精の国に住みついている妖精族は多種多様なんだ。
種族に対して自由とか寛容とかいわれることもあるが、魔法の国のように昔から同じ種族以外はきびしく追放してきた世界とは違い、門を開いた分だけ、反逆心や復讐も多い。
戦争をしている人間に似ている。見た目も人間とまったく同じやつがけっこう占めているしな。」
「だけど、たったひとりなんでしょう?その問題の妖精さん。」
「ひとりだが、そいつがグレてもらっては困る立場の妖精でな。
妖精王の跡継ぎといわれている息子のフラビスだ。
魔力も運動能力、知恵その他・・・段違いに強力だ。
平民クラスでは歯がたたないばかりか、貴族クラスでもけが人続出している。」
「フラビス・・・なんかきいたことがあるような・・・。
どうして魔法の国にたったひとりできたか理由はきいたの?
お父さまだったら、まず交渉くらいしてるでしょ?」
「俺もそれを確かめに行ったんだが・・・意味不明なんだ。
王も王妃も話ができないと言っていた。
フラビスは何かに操られているんじゃないかということまではつきとめたらしいが、攻めてきたら皆で止めるのが精いっぱいらしい。」
「それじゃ、消耗戦になっちゃうじゃない!原因を・・・原因をつきとめなきゃ。」
「で・・・俺もあっちでの知り合いをあちこちあたって調べた。
すると、フラビスによからぬウィルスを与えたのはどうやら人間らしいということまでがわかった。」
「人間が!!!?」
「それをきいてあわててもどってきた。
もしかしたら、フラビスと同じ目におまえもあうかもしれない・・・。」
「ちょ、ちょっと待てよ。そのウィルスを妖精の王子さんに感染させたのが人間ならだぞ、今頃こっちのニュースで大騒ぎになるほどの一大事になってるはずじゃないのか?
どうして人間は平和に暮らしてるんだよ。
なんで、妖精の王子さんだけが暴走するんだよ。」
「それは、人間の免疫力でウィルスが死滅するからじゃないか・・・と研究員からきいた。
妖精の種族は人間のおとぎ話でも心が清らかじゃないと見えないとか会えないとかいわれてきただろう?
つまり、妖精族は汚い物への免疫がない。よって感染する。
そこを狙えば、妖精の国や魔法の国、魔獣の国あたりは壊滅させることもできるかもしれない。
免疫力は弱いのに、攻撃力は高いからな。」
「俺のいない間に厄介なことになってしまったようだな。」
「カリフ・・・どうして?」
「俺の本来の使命は何だった?」
「監視者。って・・・まさかずっと見てたの?」
「ああ、おやゆび姫のおまえの服を用意したのは誰だった?」
「あっ、服に魔法がかかってたのね。」
「そうだ。服がモニターがわりってわけ。
まぁ、服を全部脱いで何かしらやってることまでは、見えないけどな。
で、おまえはもう故郷にはもどりたくないということか?」
「それは・・・。」
「カリフ!なぜ、俺とチェルミが付き合うことが故郷にもどれないことになるんだ?
俺がわかるように説明してくれないか?」
ディルバは真剣な目をしてカリフに詰め寄った。
「いいだろう。チェルミは魔法の国の王女なのはわかってるな。
現在は罪を償うために流刑され、人間の世界に来た。
自力脱出できないように半分の魔力を引き抜かれてな。
この世界から魔法の国や別の世界へ移動する場合、かなりの魔力がないと移動はできないし、行き来するとなると高度な魔法力やテクニックが必要になる。
仮におまえとチェルミが結婚したとして、ありきたりな家族になろうとすれば、チェルミが魔力を捨て、人間となってここで暮らすか、魔法の国以外の世界でやっていくかの選択になる。」
「魔法の国ではやっていけないということか・・・。」
「そうだ。魔法の国は魔法使い以外の種族を受け入れる慣習はないし、目覚めたときから魔法を使う生活があたりまえなんだ。
しかも、人間の配偶者との間にできた子どもに魔力がなかったとしたら、その子どもは即刻人間界に追放になるか、死産の扱いとされる。」
「殺されるっていうのか・・・。なんてこと!」
「しかも、国王はチェルミの20才での審査でもどってくるものだと信じている。
兄妹たちも、チェルミの罪のことは言っても、憎んでいるわけじゃない。」
「じゃ、ミレイお姉さまは私のことを憎んでないの?そんなことないよね。
あんなに怒ってたもの。みんな、私のことをなじったもの。」
「チェルミ。俺は昨日まで、王宮に行ってきていろいろ調べてきた。
じつはな・・・君の家族はみんなミレイのフィアンセが悪人だってことを知っていた。」
「なんで?あいつが悪いのを知っていてどうして、私が罪人にされたの?
なんで、ミレイお姉さまが私を憎んでまで、追放したの?」
「王、王妃、長男、長女は魔法世界に危険を感じたときは皆の先頭に立って、守らなければならないし、原因を究明する責任がある。
そしてその下の血族の皆様は何らかの理由で王室の血が絶えぬように生き抜くことが絶対とされている。」
「わざと、チェルミを追放したんだな。チェルミの両親と兄と姉は何かと戦っているのか?」
「先生だけあって察しがいいな。
大なり小なり、外敵というのはどこの国でもあるものだが・・・今、魔法の国を悩ませているのは、ひとりの妖精だ。」
「妖精?おとぎ話なんかに出て来るやつら・・・?」
「人間の絵本に出て来るヤツみたいなのもいるが、妖精の国に住みついている妖精族は多種多様なんだ。
種族に対して自由とか寛容とかいわれることもあるが、魔法の国のように昔から同じ種族以外はきびしく追放してきた世界とは違い、門を開いた分だけ、反逆心や復讐も多い。
戦争をしている人間に似ている。見た目も人間とまったく同じやつがけっこう占めているしな。」
「だけど、たったひとりなんでしょう?その問題の妖精さん。」
「ひとりだが、そいつがグレてもらっては困る立場の妖精でな。
妖精王の跡継ぎといわれている息子のフラビスだ。
魔力も運動能力、知恵その他・・・段違いに強力だ。
平民クラスでは歯がたたないばかりか、貴族クラスでもけが人続出している。」
「フラビス・・・なんかきいたことがあるような・・・。
どうして魔法の国にたったひとりできたか理由はきいたの?
お父さまだったら、まず交渉くらいしてるでしょ?」
「俺もそれを確かめに行ったんだが・・・意味不明なんだ。
王も王妃も話ができないと言っていた。
フラビスは何かに操られているんじゃないかということまではつきとめたらしいが、攻めてきたら皆で止めるのが精いっぱいらしい。」
「それじゃ、消耗戦になっちゃうじゃない!原因を・・・原因をつきとめなきゃ。」
「で・・・俺もあっちでの知り合いをあちこちあたって調べた。
すると、フラビスによからぬウィルスを与えたのはどうやら人間らしいということまでがわかった。」
「人間が!!!?」
「それをきいてあわててもどってきた。
もしかしたら、フラビスと同じ目におまえもあうかもしれない・・・。」
「ちょ、ちょっと待てよ。そのウィルスを妖精の王子さんに感染させたのが人間ならだぞ、今頃こっちのニュースで大騒ぎになるほどの一大事になってるはずじゃないのか?
どうして人間は平和に暮らしてるんだよ。
なんで、妖精の王子さんだけが暴走するんだよ。」
「それは、人間の免疫力でウィルスが死滅するからじゃないか・・・と研究員からきいた。
妖精の種族は人間のおとぎ話でも心が清らかじゃないと見えないとか会えないとかいわれてきただろう?
つまり、妖精族は汚い物への免疫がない。よって感染する。
そこを狙えば、妖精の国や魔法の国、魔獣の国あたりは壊滅させることもできるかもしれない。
免疫力は弱いのに、攻撃力は高いからな。」