不完全な魔女
カリフは驚いてチェルミの顔をのぞきこんだ。
「チェルミ、魔法を使えない女の子を連れて危険が伴う任務はできないんだ・・・わかってくれないか。
先生や友達と勉強していた方が君のためになるんだよ。」
「嫌よ!ウィルスに犯された人は私を狙って暴れるんでしょ。
私のせいで怪我をする人が出るのは嫌。
それに、ディルバ先生はみんなを守らなきゃいけないんだもん。
私のせいで面倒なことさせられない。」
「チェルミ、俺は面倒だなんて思ってない。
俺も、君を守りたいんだ。君のことが嫌だとか厄介だなんて誤解しないでくれ。
俺だって君を守りたいんだ。」
「無理しないで、先生。
私わかってるつもり。記憶のあちこちが消えてるのはどうしてかなって思ってたけど、それはきっと先生との時間なんじゃないかって思うの。
だって・・・私、さっき先生が無事かって抱きしめてくれたときに、いけない気持ちになったの。」
「いけない気持ち?まさか・・・。」
「私は先生をどんどん好きになってしまうって。
それは生徒としてじゃなくて。私は人間じゃないのに・・・許されないことなのに、さっきの一瞬で先生の体温を知っておかしくなってしまったの。
だからカリフについて行った方が・・・学校の誰も迷惑がかからないし、私は殺されてもその方がこの世界の人が傷つかずにすむわ。」
チェルミがそう言った途端、ディルバはチェルミを強く抱きしめた。
「俺が、俺が守りたいんだぁ!遠慮するな。
カリフ、あんたがどんなに彼女の記憶を消しても、このとおりだよ。
こんなこと言われて、俺はもう身を引こうなんて思わない!
先のことはわからなくても、今の気持ちは止められないんだ。」
「そうみたいだな。
本国も普通ではなくなっているから、未来がどうなるかはわからないな。
言えてるのは、今がチェルミにとって危険になったってことだけだ。
ディルバ、免職にならない程度によろしく頼む。」
「ああ。がんばるよ。カリフ・・・あんたも死なないでくれ。」
「俺はそう簡単にくたばらないよ。
それに、近いうちに助っ人が来るしな。」
「助っ人?」
「王様が俺ひとりだと荷が重いだろうって若手をひとり差し向けてくれたらしい。
いずれ、おまえにも紹介するよ。
とにかく物騒になったのは確かだから、チェルミのことを頼むな。」
「ああ。」
結局、逮捕された犯人は警察の研究室でウィルスについて調べられることになった。
しかし、人間の科学チームではウィルスについて解明されても、どうして犯人に感染したのかが不明のままだった。
さすがに、人間以外の存在が見た目人間として存在しているということは、ひとりの科学者以外はわかっていなかった。
そして、たったひとり人間の身で感染した人が人間とは別の細胞を持っていることに気付いた科学者は、チェルミの存在にたどり着いていた。
「はじめまして、僕はジェミオ・ランカム。
ウィルスについて研究している科学者です。
先日の刃物男の事件のことで、お伺いしたいことがあります。」
「あの事件のことについて妹は忘れようと努力しています。
あなた方の捜査では、殺人鬼の犯人を逮捕したことと人間には害のないウィルスだったってことで決着がついたとききました。
なのに、まだ妹に恐怖を思い出させるのですか?」
カリフは冷たい表情のメガネの青年科学者を玄関でつっぱねたが、ジェミオもそう簡単に引き下がらない様子で、
「そうですか。追い込まれて、殺されそうになったのですから無理はありませんね。
では、せめて妹さんに挨拶だけでもさせてもらえませんか?
何も質問などしません。顔色とか現在が健康そうなのか確かめたら素直に帰りますから。」
「仕方ありませんね。顔見世だけしたら帰ってくださいよ。」
「はい。」
カリフがチェルミを呼びに行っている間に、ジェミオは玄関であるものに目をとめた。
(これは・・・もしかして・・・)
ジェミオは自分のメガネの耳にかかっている部分を触って声をあげた。
「あ!・・・やっぱりそうなんだ。」
「あの、お待たせしました・・・チェルミです。」
じっとジェミオはチェルミの顔をながめると、すぐにさっと右手をとって軽くキスをした。
「きゃっ!」
「あ、失礼。レディにきちんと挨拶をしなければと思ったものですから。
予想していたよりも、ずっとかわいらしくて、きれいな異世界人種さんだね。」
チェルミの後からついてきたカリフが思わず、声を荒げてジェルミの胸ぐらをつかんだ。
「おい、おまえは何者だ!初対面で図々しいと思ったが、何が目的なのか言え!
普通の科学者じゃないだろ。」
「く、苦しいです。僕はあなたたちに害を与えに来たのではない。
助けてあげたくてきたんです。
とにかく、中に入れていただけませんか。
きちんと説明させていただきますので・・・。」
「チェルミ、魔法を使えない女の子を連れて危険が伴う任務はできないんだ・・・わかってくれないか。
先生や友達と勉強していた方が君のためになるんだよ。」
「嫌よ!ウィルスに犯された人は私を狙って暴れるんでしょ。
私のせいで怪我をする人が出るのは嫌。
それに、ディルバ先生はみんなを守らなきゃいけないんだもん。
私のせいで面倒なことさせられない。」
「チェルミ、俺は面倒だなんて思ってない。
俺も、君を守りたいんだ。君のことが嫌だとか厄介だなんて誤解しないでくれ。
俺だって君を守りたいんだ。」
「無理しないで、先生。
私わかってるつもり。記憶のあちこちが消えてるのはどうしてかなって思ってたけど、それはきっと先生との時間なんじゃないかって思うの。
だって・・・私、さっき先生が無事かって抱きしめてくれたときに、いけない気持ちになったの。」
「いけない気持ち?まさか・・・。」
「私は先生をどんどん好きになってしまうって。
それは生徒としてじゃなくて。私は人間じゃないのに・・・許されないことなのに、さっきの一瞬で先生の体温を知っておかしくなってしまったの。
だからカリフについて行った方が・・・学校の誰も迷惑がかからないし、私は殺されてもその方がこの世界の人が傷つかずにすむわ。」
チェルミがそう言った途端、ディルバはチェルミを強く抱きしめた。
「俺が、俺が守りたいんだぁ!遠慮するな。
カリフ、あんたがどんなに彼女の記憶を消しても、このとおりだよ。
こんなこと言われて、俺はもう身を引こうなんて思わない!
先のことはわからなくても、今の気持ちは止められないんだ。」
「そうみたいだな。
本国も普通ではなくなっているから、未来がどうなるかはわからないな。
言えてるのは、今がチェルミにとって危険になったってことだけだ。
ディルバ、免職にならない程度によろしく頼む。」
「ああ。がんばるよ。カリフ・・・あんたも死なないでくれ。」
「俺はそう簡単にくたばらないよ。
それに、近いうちに助っ人が来るしな。」
「助っ人?」
「王様が俺ひとりだと荷が重いだろうって若手をひとり差し向けてくれたらしい。
いずれ、おまえにも紹介するよ。
とにかく物騒になったのは確かだから、チェルミのことを頼むな。」
「ああ。」
結局、逮捕された犯人は警察の研究室でウィルスについて調べられることになった。
しかし、人間の科学チームではウィルスについて解明されても、どうして犯人に感染したのかが不明のままだった。
さすがに、人間以外の存在が見た目人間として存在しているということは、ひとりの科学者以外はわかっていなかった。
そして、たったひとり人間の身で感染した人が人間とは別の細胞を持っていることに気付いた科学者は、チェルミの存在にたどり着いていた。
「はじめまして、僕はジェミオ・ランカム。
ウィルスについて研究している科学者です。
先日の刃物男の事件のことで、お伺いしたいことがあります。」
「あの事件のことについて妹は忘れようと努力しています。
あなた方の捜査では、殺人鬼の犯人を逮捕したことと人間には害のないウィルスだったってことで決着がついたとききました。
なのに、まだ妹に恐怖を思い出させるのですか?」
カリフは冷たい表情のメガネの青年科学者を玄関でつっぱねたが、ジェミオもそう簡単に引き下がらない様子で、
「そうですか。追い込まれて、殺されそうになったのですから無理はありませんね。
では、せめて妹さんに挨拶だけでもさせてもらえませんか?
何も質問などしません。顔色とか現在が健康そうなのか確かめたら素直に帰りますから。」
「仕方ありませんね。顔見世だけしたら帰ってくださいよ。」
「はい。」
カリフがチェルミを呼びに行っている間に、ジェミオは玄関であるものに目をとめた。
(これは・・・もしかして・・・)
ジェミオは自分のメガネの耳にかかっている部分を触って声をあげた。
「あ!・・・やっぱりそうなんだ。」
「あの、お待たせしました・・・チェルミです。」
じっとジェミオはチェルミの顔をながめると、すぐにさっと右手をとって軽くキスをした。
「きゃっ!」
「あ、失礼。レディにきちんと挨拶をしなければと思ったものですから。
予想していたよりも、ずっとかわいらしくて、きれいな異世界人種さんだね。」
チェルミの後からついてきたカリフが思わず、声を荒げてジェルミの胸ぐらをつかんだ。
「おい、おまえは何者だ!初対面で図々しいと思ったが、何が目的なのか言え!
普通の科学者じゃないだろ。」
「く、苦しいです。僕はあなたたちに害を与えに来たのではない。
助けてあげたくてきたんです。
とにかく、中に入れていただけませんか。
きちんと説明させていただきますので・・・。」