不完全な魔女
深夜になってチェルミは起きてきた。
「ごめん・・・カリフ。私寝てしまったようで。」
「ああ、気にしないで。
ディルバからきいたけど、本国に戦いに行くんだって。」
「ええ。もう放っておけない。
それに、妖精王のテレポートと接近してくる速さはわからないけど、ディルバが協力してくれるならできるかもしれないと思って。
できれば・・・あ、いいわ。」
「できれば援護して。だろ?」
「いいの?」
「もちろん。本国が俺みたいな者でも入れてくれるっていうならな。」
「そこが私もひっかかってるのよ。
お父様がいればカリフも許可証付きで入れるけれど・・・今はどうなってるのか。
でも、妖精の森でも混乱してるみたいだし、たぶん入れるんじゃないかって思うの。
それにディルバだって入れなきゃ倒せないじゃない?
だからカリフも私と同じく退治屋だってことで。」
「俺は退治屋かぁ?
ふふっ、チェルミ・・・どうやら前に出られるようだな。」
「もちろんよ。いつまでも泣いてなんかいられないわ。
もう終わったことなら別だけど、まだ戦いは終わってないんだから。」
「よっしゃ!ジェミオから3種類の薬も預かってるから、それも持っていこう。
詳しい事情は行きながら説明してやるから。」
「ええ。準備をして朝に備えるわ。」
翌朝、ジェミオも見送りにカリフたちの家にやってきていた。
「僕は足手まといにならないように、ここで待ってるよ。
薬は多めに用意したし、とりあえず足りないようならまたもどってきてくれ。」
「ええ、無理はしないつもりよ。」
「なんとかみんな魔法の国に入れることを祈ってるよ。」
「おそらく混乱に乗じて入れると思います。」
「だってさ。こいつも律儀だねぇ。
ランダルは純粋種だってのに、わざわざ現状を調べて報告するとはね。」
「俺も今の状態をみて、これはチェルミお嬢様とディルバの力がいると思ったからです。」
「ランダル・・・あなた。」
「チェルミ様のことは王様から命じられて大切に思ってまいりましたが、その王様もいない場所で、世界が壊れようとしているのに、自分ができることがないのはつらくて・・・。」
「いいんだな、俺がいっても。」
「はい。チェルミお嬢様のこと、お願いします。
相手は妖精王です。速さには気をつけてください。」
「わ、わかった。俺も同じ種類のエスパーと対決するなんて考えてはいなかったけど、この力を試せるときがきた。
それもチェルミの世界を救うためだ。
できるかぎりがんばってみるよ。」
「先生・・・。」
「もう、俺は君の担任じゃない。
とはいっても、まだ高校生じゃなぁ・・・。」
「高校生じゃ嫌い?」
「いや、そうじゃなくって・・・。
(俺が欲望に負けてしまうんじゃないかってことなんだが・・・さすがに高校生に説くわけにはいかんな。)
君が高校卒業してからの話だ。
それまでは担任じゃなくても君は生徒なんだから。」
「ごめんなさい・・・。」
「こんな危ないことを頼んだりして。」
「気にするな。
チェルミが血まみれ死体にされてた方が俺はまともではいられない。」
そしてすぐにチェルミ、ディルバ、ランダル、カリフの4人はジェミオに家の管理を任せて魔法の国へと出かけていった。
「ディルバ、チェルミお嬢さまから手を離すなよ。」
先頭をランダルが飛び、叫んだ。
後方をカリフが飛び、追手に警戒していた。
そして出て5分ほどでゲートの口のようなものが前方に見えた。
「あれが魔法の国の入り口だ。
あそこから侵入して誰も出て来なければ、自由にふるまえる。
しかし、誰かが出てきて関係だの許可だの問いただされたら・・・?」
「大丈夫ですよ。カリフ。
俺が来るときだって誰もいませんでした。
今は、みんな目立ったことをすれば妖精王に攻撃を受ける恐れが大きい。
そんな質問よりも、妖精族が魔法の国を目いっぱい荒らしていないかが気がかりです。」
「そうか・・・。
それはそれで厄介だな。
ってことはもう臨戦態勢でいいってことか・・・。」
ゲートを出てみると4人を待ち受けている者は誰もいなかった。
「やはり誰も出てこないな。」
ランダルは王宮へと3人を導いた。
チェルミはどきどきしながらも王宮にたどり着くと、長兄のミロアが待っていた。
「ミロアお兄さま!」
「チェルミか・・・無事だったか。」
「ええ、人間界にウィルスを持ち込んだ者がいたの。
それと・・・私・・・魔法を使えるんだけど、父さまが・・・。」
「ああ、亡くなった。たくさんの親戚も死んだ。
兄弟のうちで助かったのは、僕とミレイだけだ。」
「じゃ、他の兄様と姉様たちは・・・。うぅぅっ」
「ああ、みんながんばったんだが・・・だめだったよ。
ところで、こちらの人は?
カリフは知っているが、そちらの人は魔法使いではないな。」
「ごめん・・・カリフ。私寝てしまったようで。」
「ああ、気にしないで。
ディルバからきいたけど、本国に戦いに行くんだって。」
「ええ。もう放っておけない。
それに、妖精王のテレポートと接近してくる速さはわからないけど、ディルバが協力してくれるならできるかもしれないと思って。
できれば・・・あ、いいわ。」
「できれば援護して。だろ?」
「いいの?」
「もちろん。本国が俺みたいな者でも入れてくれるっていうならな。」
「そこが私もひっかかってるのよ。
お父様がいればカリフも許可証付きで入れるけれど・・・今はどうなってるのか。
でも、妖精の森でも混乱してるみたいだし、たぶん入れるんじゃないかって思うの。
それにディルバだって入れなきゃ倒せないじゃない?
だからカリフも私と同じく退治屋だってことで。」
「俺は退治屋かぁ?
ふふっ、チェルミ・・・どうやら前に出られるようだな。」
「もちろんよ。いつまでも泣いてなんかいられないわ。
もう終わったことなら別だけど、まだ戦いは終わってないんだから。」
「よっしゃ!ジェミオから3種類の薬も預かってるから、それも持っていこう。
詳しい事情は行きながら説明してやるから。」
「ええ。準備をして朝に備えるわ。」
翌朝、ジェミオも見送りにカリフたちの家にやってきていた。
「僕は足手まといにならないように、ここで待ってるよ。
薬は多めに用意したし、とりあえず足りないようならまたもどってきてくれ。」
「ええ、無理はしないつもりよ。」
「なんとかみんな魔法の国に入れることを祈ってるよ。」
「おそらく混乱に乗じて入れると思います。」
「だってさ。こいつも律儀だねぇ。
ランダルは純粋種だってのに、わざわざ現状を調べて報告するとはね。」
「俺も今の状態をみて、これはチェルミお嬢様とディルバの力がいると思ったからです。」
「ランダル・・・あなた。」
「チェルミ様のことは王様から命じられて大切に思ってまいりましたが、その王様もいない場所で、世界が壊れようとしているのに、自分ができることがないのはつらくて・・・。」
「いいんだな、俺がいっても。」
「はい。チェルミお嬢様のこと、お願いします。
相手は妖精王です。速さには気をつけてください。」
「わ、わかった。俺も同じ種類のエスパーと対決するなんて考えてはいなかったけど、この力を試せるときがきた。
それもチェルミの世界を救うためだ。
できるかぎりがんばってみるよ。」
「先生・・・。」
「もう、俺は君の担任じゃない。
とはいっても、まだ高校生じゃなぁ・・・。」
「高校生じゃ嫌い?」
「いや、そうじゃなくって・・・。
(俺が欲望に負けてしまうんじゃないかってことなんだが・・・さすがに高校生に説くわけにはいかんな。)
君が高校卒業してからの話だ。
それまでは担任じゃなくても君は生徒なんだから。」
「ごめんなさい・・・。」
「こんな危ないことを頼んだりして。」
「気にするな。
チェルミが血まみれ死体にされてた方が俺はまともではいられない。」
そしてすぐにチェルミ、ディルバ、ランダル、カリフの4人はジェミオに家の管理を任せて魔法の国へと出かけていった。
「ディルバ、チェルミお嬢さまから手を離すなよ。」
先頭をランダルが飛び、叫んだ。
後方をカリフが飛び、追手に警戒していた。
そして出て5分ほどでゲートの口のようなものが前方に見えた。
「あれが魔法の国の入り口だ。
あそこから侵入して誰も出て来なければ、自由にふるまえる。
しかし、誰かが出てきて関係だの許可だの問いただされたら・・・?」
「大丈夫ですよ。カリフ。
俺が来るときだって誰もいませんでした。
今は、みんな目立ったことをすれば妖精王に攻撃を受ける恐れが大きい。
そんな質問よりも、妖精族が魔法の国を目いっぱい荒らしていないかが気がかりです。」
「そうか・・・。
それはそれで厄介だな。
ってことはもう臨戦態勢でいいってことか・・・。」
ゲートを出てみると4人を待ち受けている者は誰もいなかった。
「やはり誰も出てこないな。」
ランダルは王宮へと3人を導いた。
チェルミはどきどきしながらも王宮にたどり着くと、長兄のミロアが待っていた。
「ミロアお兄さま!」
「チェルミか・・・無事だったか。」
「ええ、人間界にウィルスを持ち込んだ者がいたの。
それと・・・私・・・魔法を使えるんだけど、父さまが・・・。」
「ああ、亡くなった。たくさんの親戚も死んだ。
兄弟のうちで助かったのは、僕とミレイだけだ。」
「じゃ、他の兄様と姉様たちは・・・。うぅぅっ」
「ああ、みんながんばったんだが・・・だめだったよ。
ところで、こちらの人は?
カリフは知っているが、そちらの人は魔法使いではないな。」