不完全な魔女
結局、チェルミとカリフそして、ミロアもネコに変身して2人が軟禁されている部屋へとたどり着いた。


「げっ、3人とも・・・なんでネコ?」


ディルバが驚いてそう呟いたが、ミロアがしかめっ面のまま


「この部屋に来るには大きさがなかったんだから仕方なかろう。」

と言い放ったことでみんなが理解できた。


ジェミオが心配していたとおり、ディルバとマウレスはテレポートすることができなかった。

だから2人も魔法でネコになって外の世界へと脱出した。



「ふう、助かったよ。まさか、あんな能力避けな部屋まで用意してると思わなかったものだからさ。
ほんとに困ってたよ。

チェルミが何とかしてくれるとは思ってたけどね。」


「まぁ、2人を捜せたのはジェミオの通信機のおかげよ。
それと、ネコみたいな小さな動物になって・・・っていうのもジェミオの考え。」


「もしかして、ジェミオもいるのか?」


「ええ、魔法の国のミロア兄様の客間に機材を置いて座ってくれてるわ。」


「すごいなぁ。開かれた王室じゃないか。」


「あたりまえだろ。僕が新しい王だからなぁ。
父さんの自分が先頭を走るのは同じまま、使える知恵と学識者へは特別配慮をするのが僕の時代だと思ってるからね。」


「ふふっ。それより、妖精統括部を何とかしないと、俺がいようがいまいが、妖精王を擁立されて結婚式が行われてしまうな。

それは何とかしないと・・・。」



「どうすればいいのかしら・・・。



ミロアの邸内へもどってからその結論はジェミオが簡単に答えてしまった。


「それなら、妖精王のディルバとチェルミで結婚してしまえばいいだけじゃないか。」


「ぇええええ!」


「結婚するつもりじゃなかった?
ここは人間の世界じゃないんだから、学校にいってどうのこうのなんて誰も知らないんだろう?
だったら結婚式をしてしまえば、みんな決まって一件落着じゃないか。」


「ま、それはそうだけど・・・そんな・・・。」


「チェルミ・・・何か俺だと不満があるのかい?」


「いえ、そんなことは。
だけど・・・心の準備ができてないっていうか。
ほら、妖精の皆さんはどう思っちゃうのかなあ・・・なんて。」


「俺がいいと言えばいい。
それに、君は妖精の森を救ってくれたいきさつもあるし、有名だろ?
ここで、結婚してくれないか?」



「えっ・・・は、はい。
でも、ディルバはほんとに私でいいのかな・・・なんて。」


「俺はうれしいよ。
若い嫁さんもらえてさ。

まぁ、できないことはこれから覚えればいいだけなんだし、何とかなるだろ。
チェルミ、結婚しよう。」


「は、はい。」


ミロアとマウレスの手引きもあって、まずは魔法の国で結婚式をして大々的にマスコミに流しまくった。

しかし、妖精統括部という存在があやふやなものは存在していた。

結婚式の中継をした途端、新しい妖精王の名前がもう出てきていたのだ。


「アウル・レブナ・コアンナ(26才)か。
最近まで人間界にいた。

そして、彼の母親は魔女で魔法も使える。・・・それでか。」


「混血度の高い妖精族らしい結論だな。
しかし、厄介だな。
魔法も使えるとなると・・・きついな。」


ディルバとミロアが頭をかかえていると、ジェミオがけろりとした顔で言った。


「そんな解決なんて問題ないじゃないか。
ディルバとチェルミの愛の力があればすぐに倒せるさ。」


「なっ・・・!」


ジェミオの説明によると、アウルが魔法を使えても、ひとりではテレポートなどの超能力と魔法は同時には使えないという単純なことであった。

チェルミといっしょにいるディルバには恐れるものはないという。


「しかしなぁ・・・四六時中いっしょにいるわけじゃ・・・。」


「君は現妖精王なわけだから、アウルを呼び出すか会いに行けばいいじゃないか。
素直に出頭すればよし、抵抗すれば戦闘になる。

そのときはチェルミを抱きかかえてがんばればいい。
ただ、それだけだよ。」


「でも、それじゃチェルミが・・・」


「ふふっ、それが本音かぁ。いやぁ・・・ちょっと妬けるなぁ。
チェルミは守ってほしいなんていったかい?

もちろん、精神的には守ってもらいたいのが女性だと思うけど、チェルミは君の無事のことを願っていると思うよ。」



「そうよ、私は悪いことをする相手とは戦う覚悟くらいできてるわ。
だって、王室の娘だもん。」



「チェルミ、だが・・・相手は魔法で戦ってくる。」


「わかってるわ。だけど、ディルバは魔法が使えないでしょ。
私を抱えられなければ、ミロアお兄さまかカリフを抱える?」


「いや、それは・・・」


「じゃ、私を抱えて戦うしかないじゃない。
それに、そのアウルって人にもまだ会ってもいないし。」


「そうだな・・・でも捕まった時思ったが、あの連中は頭がいいと思う。」

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