不完全な魔女
とにかく、ディルバの名前を出して、アウルに会ってみることにした。

アウルの側にひとり側近をつけていいことにして会えることになったが、どうやらそのひとりが妖精技を使うということからジェミオが考えた無線のテレポート探知機でチェルミがディルバと離れていてもテレポートすればチェルミはディルバの膝の上に到着できるような手械をつけることにした。

「おお、ジェミオすばらしい!
便利な発明だ。
ほんとに君のような天才を人間界にもどらせるのはもったいないなぁ。」


「いや、こういうのは僕のちょっとした趣味ですし、テレポートすれば一瞬で帰れますし、ちょっと行き来が気分が悪くなる程度ですよ。
それよりも、魔法界っていうのも侮れない世界です。
今回の手械もくっつける魔法というのが基本になっていますから、基本になるものがあっての僕の知恵です。」


「そういってもらえるとうれしいが、ジェミオはほんとに大した能力者だ。
これを機会に我が国にもときどき手を貸してもらえると助かる。」


「それはもちろん、僕の知恵でよろしければ・・・ね。」


ミロアとジェミオが妙に仲良くなっていたことにチェルミは少し呆れ顔だったが、そうやって知り合いが仲良くなっていくのはいいことだと思ったので、とにかく自分はアウルと会うことに集中しようと思った。

いったん人間界に皆、もどって3日ほど過ごして、それからまたディルバとチェルミはアウルと側近に会うことにした。



「アウル・レブナ・コアンナです。
こちらは秘書のカムルウです。

人数合わせのために来てもらいましたが、僕は戦闘はできればしたくありません。
おそらく、あなた方には負けてしまうでしょうからね。」


「ではなぜ、妖精王になるなんて言ったのです?」


「それは私の言葉ですよ。
あなたも人間界に居た人ならわかるでしょ。
前の妖精王を倒した功績は皆が知るところですが、それを脅威だと思う人たちも多い。

妖精統括部はそういった不安、不満もきかなくてはいけないところなんです。
私は人間界ではスーパーマーケットで働いていました。」


「えっ、スーパーでって・・・」


「おかしいですか?
私は流通業界に興味があって、人間界でいろんなご家庭の食や生活にまつわることを知るのが好きでした。
生きていくことに興味があるんです。

しかし、妖精王の話は放っておけないし、従妹のヒラルが妻にもなれないとあって僕はもどってきました。」


「1つ、聞きたいんだが、妖精王は僕が挑んですぐに倒されてもいい存在だと思うか?」


「そりゃ、倒れてはいけない存在です。
できれば今回のようなウィルスだの、見えない敵にも対処できなければ恐ろしいことになります。

逆のことをいえば、あなたが妖精王になってウィルス感染にあってしまうようなことがあれば、止められないともいえます。」


「そうだね。じゃ、どうすればいいと思う?」


「もっと魔法の国のような組織化をするべきじゃないかと。
しかし、僕もそうですが・・・妖精界にはもう純粋種は少ないかと。」


「ああ、そうみたいだ。じゃ、どうしたらいい?」


「それは・・・」


「種族に関係なく組織化して妖精王は形だけにしてしまうのでいいのではないかな。」


「なっ!妖精王をなくしてしまうのですか?」


「なくしてしまっては妖精たちの心のよりどころがなくなるのだろう?
だから、僕が妖精王になってチェルミが妃になった。

君も妖精王になっていいと思う。
そして、数人の妖精王の話し合いで物事を決めていけばいい。
それじゃ、だめなのかな?

君だって自分のしたいことがあるんだろ?
ひとりでこの世界を守るといっても難しい。
魔法の国だって存在しているしね。

だったら妖精王は形だけにしてなりたい人が皆、手をあげて承認制にでもすればいい。
そして、みんなで平和ないい世界になるように監視していけばいい。」


「なるほど・・・それだったら統括部も納得するでしょうね。
ただ、そのまえにちょっと試させていただきましょうかね。」


「何?」


「あなたの能力とお妃殿の能力をね。
カムルウ、いくぞ。」


「しょうがない。チェルミ、こちらも応戦するしかなさそうだ。」


「わかったわ。」


カムルウとアウルは同時にテレポートした。



「だめだわ、テレポートされたら魔法が当たらない!」


「大丈夫。行ったところは見当がついている。
いいか、到着したところで魔法が使えるようにしておくんだ。
たとえ失敗してもめげるなよ。
できれば弱めの魔法を数回使う気で戦うんだ。
いいな。」


「わかったわ。」
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