不完全な魔女
ディルバは人間は敵なのか?という言葉にハッとした。
ディルバの母と自分は人間なのに、さげすまれてここに来ることになった。
婚外子ということもあったが、小さい頃に人に話した夢が正夢続きだったり、庭でテレポートしてるのを見られたりして、妖怪とか化け物とか言われたことがあった。
(俺は人間だ・・・。)
「人間が敵ばかりとは限らないんだ。
自分とぜんぜん別の存在だから怖いんだよ。
だから、おまえの兄さんはおまえが別の存在にならないように、魔法を使わない人間でいるように注意をしてくれてるんだ。わかるか?」
「はい。だけど・・・本当の自分を知ってくれる先生がいたから守れそうだけど、誰も知らない人間ばかりだったら、魔法なしで生きようとは思えないなぁ。
魔女は魔女だもん。」
「魔女は魔女か・・・。」
自分に言いきかしているようだ・・・とディルバは思い返していた。
そんなことを考えている間に、テーブルの上のチョコレートケーキはディルバの分を残しただけですっかりなくなってしまっていた。
「え・・・ない!
こらっ、チェルミ!そんだけ食ったんなら夜にまた来い。
腹ごなしにどこかへ出かけよう。」
「おっけ・・・あ!先生だめだぁ。今夜はお兄ちゃんの授業があるの。」
「お兄ちゃんの授業だって?
まさか・・・魔法のか?」
小さい声でディルバがききなおすと、チェルミはこくんと頷いた。
「じゃ、今度な。」
「うん、ごめんね。」
ディルバは魔法の授業という言葉にとても興味をそそられた。
自分は毎日、国語の授業をしているが、カリフの行なう魔法の授業とはどういったことをやるのか?
想像をはたらかせてみる。
(タヌキの化ける練習みたいなものかなぁ・・・。
大きな岩とかに立ち向かって吹っ飛ばすとか?
海のしぶきを操るとか?
いや、もっと家庭的に、手を使わないでオムレツを作るとか?
ああーーー!気になるぅ・・・。)
夜、夕飯が終わってから、ディルバはこっそりと瞬間移動でカリフの部屋の前へと行ってみた。
(妙に静かだな・・・)
そーーっと中をのぞいてみると、部屋のあかりが真っ暗な中でうっすら白く光っている人が見える。
「なっ!!!?」
白く光っていたカリフとチェルミが濃厚なキスをしていたのを目撃したディルバは声をあげてしまった。
「困るなぁ・・・先生。授業の見学は最初に許可とってもらわないとさ・・・。
あんた、死んでたかもしれないぜ。」
「ど、どういうことだ!おまえは、チェルミの兄ってことになってるだろ。
いくら監視者とかいう偉いやつでもだな・・・うら若き乙女にそんなハレンチ行為をさせるなんて、許されるもんじゃない!」
「はぁ?これはチェルミの魔力を補給してやってるだけだ。
こいつはここでは不完全な魔女だからな。
1日の半分以上、魔法を使っていないとだんだん魔力そのものが退化していくんだ。
人間の3分の1くらいも、そうやって退化した魔法使いの子孫だ。」
「そ、そうなのか。」
「だから、こいつに魔力補充をしてやって、ときどき思う存分魔法を使わせてやらなくちゃならない。
だが、毎日魔法を使いまくってれば、ここがわれてしまうし、通報でもされたら厄介なことになる。
さりげなく、地味にやるしかないんだよ。
本人からきいたかもしれないが、こいつは王女なんだからな。
とにかく、今は魔力を補充したばかりで、ちょっとしたトランス状態に入ってる。
もう少し補充したら、目が覚めて授業をするから、待ってくれ。」
「お、おい、まだ口うつしをするのか?」
「あん?もしかしてあんた、妬いてるのか?」
「そ、そんなことは・・・だけど、目の前で大切な生徒がそんなことされてるなんて・・・だな。」
「じゃ、いいや。あんたに口移しして補充分あげるから、あんたがチェルミに与えろよ。」
「そ、そんなこと・・・俺は。俺は担任だぞ、生徒に手なんか出したらクビがとんじまう。」
「あ、そ。それじゃ黙って見ててくれるしかないだろ。」
「待てよ、わかった・・・俺にくれ。」
「いいんだな。心配しなくても、おまえは男だから一瞬で移動する。
男から女に与えるときは、時間がかかる。」
「それはなぜなんだ?興味深いな。」
「それは・・・愛の行為と魔力補給との区別をして与えなければならないからだ。
俺のようなベテラン魔法使いだとな、うっかりその分け目をなくしちまうと、チェルミが俺のすべてがほしくなっちまう。
つまり、本気の愛情表現でのキスをすれば、そこに固めた魔力が乗っかってしまい、人間の言葉でいうところの『おまえなしでは生きられないんだ。』とか『おまえのすべてがほしい』と告白し続けてる状況になるんだ。
俺は分別ある師匠だからな、区別時間をきちんととって安全にチェルミに魔力を与え続けている。
わかったか。」
ディルバの母と自分は人間なのに、さげすまれてここに来ることになった。
婚外子ということもあったが、小さい頃に人に話した夢が正夢続きだったり、庭でテレポートしてるのを見られたりして、妖怪とか化け物とか言われたことがあった。
(俺は人間だ・・・。)
「人間が敵ばかりとは限らないんだ。
自分とぜんぜん別の存在だから怖いんだよ。
だから、おまえの兄さんはおまえが別の存在にならないように、魔法を使わない人間でいるように注意をしてくれてるんだ。わかるか?」
「はい。だけど・・・本当の自分を知ってくれる先生がいたから守れそうだけど、誰も知らない人間ばかりだったら、魔法なしで生きようとは思えないなぁ。
魔女は魔女だもん。」
「魔女は魔女か・・・。」
自分に言いきかしているようだ・・・とディルバは思い返していた。
そんなことを考えている間に、テーブルの上のチョコレートケーキはディルバの分を残しただけですっかりなくなってしまっていた。
「え・・・ない!
こらっ、チェルミ!そんだけ食ったんなら夜にまた来い。
腹ごなしにどこかへ出かけよう。」
「おっけ・・・あ!先生だめだぁ。今夜はお兄ちゃんの授業があるの。」
「お兄ちゃんの授業だって?
まさか・・・魔法のか?」
小さい声でディルバがききなおすと、チェルミはこくんと頷いた。
「じゃ、今度な。」
「うん、ごめんね。」
ディルバは魔法の授業という言葉にとても興味をそそられた。
自分は毎日、国語の授業をしているが、カリフの行なう魔法の授業とはどういったことをやるのか?
想像をはたらかせてみる。
(タヌキの化ける練習みたいなものかなぁ・・・。
大きな岩とかに立ち向かって吹っ飛ばすとか?
海のしぶきを操るとか?
いや、もっと家庭的に、手を使わないでオムレツを作るとか?
ああーーー!気になるぅ・・・。)
夜、夕飯が終わってから、ディルバはこっそりと瞬間移動でカリフの部屋の前へと行ってみた。
(妙に静かだな・・・)
そーーっと中をのぞいてみると、部屋のあかりが真っ暗な中でうっすら白く光っている人が見える。
「なっ!!!?」
白く光っていたカリフとチェルミが濃厚なキスをしていたのを目撃したディルバは声をあげてしまった。
「困るなぁ・・・先生。授業の見学は最初に許可とってもらわないとさ・・・。
あんた、死んでたかもしれないぜ。」
「ど、どういうことだ!おまえは、チェルミの兄ってことになってるだろ。
いくら監視者とかいう偉いやつでもだな・・・うら若き乙女にそんなハレンチ行為をさせるなんて、許されるもんじゃない!」
「はぁ?これはチェルミの魔力を補給してやってるだけだ。
こいつはここでは不完全な魔女だからな。
1日の半分以上、魔法を使っていないとだんだん魔力そのものが退化していくんだ。
人間の3分の1くらいも、そうやって退化した魔法使いの子孫だ。」
「そ、そうなのか。」
「だから、こいつに魔力補充をしてやって、ときどき思う存分魔法を使わせてやらなくちゃならない。
だが、毎日魔法を使いまくってれば、ここがわれてしまうし、通報でもされたら厄介なことになる。
さりげなく、地味にやるしかないんだよ。
本人からきいたかもしれないが、こいつは王女なんだからな。
とにかく、今は魔力を補充したばかりで、ちょっとしたトランス状態に入ってる。
もう少し補充したら、目が覚めて授業をするから、待ってくれ。」
「お、おい、まだ口うつしをするのか?」
「あん?もしかしてあんた、妬いてるのか?」
「そ、そんなことは・・・だけど、目の前で大切な生徒がそんなことされてるなんて・・・だな。」
「じゃ、いいや。あんたに口移しして補充分あげるから、あんたがチェルミに与えろよ。」
「そ、そんなこと・・・俺は。俺は担任だぞ、生徒に手なんか出したらクビがとんじまう。」
「あ、そ。それじゃ黙って見ててくれるしかないだろ。」
「待てよ、わかった・・・俺にくれ。」
「いいんだな。心配しなくても、おまえは男だから一瞬で移動する。
男から女に与えるときは、時間がかかる。」
「それはなぜなんだ?興味深いな。」
「それは・・・愛の行為と魔力補給との区別をして与えなければならないからだ。
俺のようなベテラン魔法使いだとな、うっかりその分け目をなくしちまうと、チェルミが俺のすべてがほしくなっちまう。
つまり、本気の愛情表現でのキスをすれば、そこに固めた魔力が乗っかってしまい、人間の言葉でいうところの『おまえなしでは生きられないんだ。』とか『おまえのすべてがほしい』と告白し続けてる状況になるんだ。
俺は分別ある師匠だからな、区別時間をきちんととって安全にチェルミに魔力を与え続けている。
わかったか。」