黒イ世界
「遼、大丈夫?もしかして血、駄目だった?顔色悪いよ…」

僕はどんな表情をしていたのだろう。奏の言葉でハッと我に返った。


「いや、駄目とかじゃなくて…そうだよ、手当てしないと!!!」

慌てて彼の手を掴んだ。しかし傷が無くなっていた。机には先ほど垂れた血が、赤黒く光っている。

「あれ…?傷が…?」

指で手首をなぞっても、傷があったような痕跡はなかった。


「これが彼の力。傷がすぐ治ってしまうの。自己治癒がってやつかしら。
不思議よね。」

いろんな人がいるだろうとは思っていたが、驚いた。

「奏、パーツ無くなったりしたらさすがに痛いし、治るの遅いからね。」

彼はさらっと言った。


僕は何も言葉が出なかった。
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