黒イ世界

私の中の両親との記憶は、すでに微かなものになっていた。
十年以上前の事だ。記憶がなくても仕方ない。

ただ、最後に母親が泣いていたのだけは、今でも鮮明に覚えている。

きっと今も、二人とも元気に生きているのだろう。私のことなど忘れて―






6歳の時、私は彼らに捨てられてしまった。

正確には売られたかもしれない。本当のところどうなのか私には分からないが、今更どうでもよかった。

あんな事がなければ、今でも両親と幸せに暮らしていられただろう。






あの日が私の運命を変えてしまったのだった。


< 28 / 113 >

この作品をシェア

pagetop