黒イ世界
あれは、朱い三日月が不気味に輝く夜だった。
いつもの黄色く優しい光で照らしてくれる月ではない。それだけで、怖くて不安になった。




そんな不安な夜もいつもの様に、母は絵本を読んでくれた。
この家にはたくさんの絵本があり、父が買い集めてくれたものだった。


母の優しい声が、子守歌となって、私は不安など忘れていつしか深い眠りについていた。

母は私の額にそうっとキスをして、部屋を出ていった。



幼い頃から、私はよく夢を見る子供だった。

そして次の日に、その見た夢を母に話して聞かせるのが好きだった。
母はいつも優しく微笑んで聞いてくれた。




今夜も同じ様になるはずだった。






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