黒イ世界
枕もシーツも汗で、びっしょりと湿っていた。

空にあの赤い月は見えなかった。
だが、まだ夜は開けていない。

一人が怖くなって、横に寝ていた縫いぐるみをきつく抱いた。


「ママの所行こうかな…」


抱いている、大きなうさぎの縫いぐるみに話し掛けた。
真っ黒な丸い瞳はじっと私を見つめるだけだった。

ふと、背中の違和感に気付いた。
微かだが、痛みを感じた。しかし、何よりも変な感じがして気持ち悪い。

鏡がないこの部屋では、自分の背中を見ることはできない。

どうしよう…考えれば考えるだけ怖くなって来た。

ふとんを頭から被り、朝が来るのを待私はひたすら待った。

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