黒イ世界
その時母がぎゅっと、抱きしめてくれた。

「ごめんね、奏。悲しくさせていたんだね。ごめんね。」

その言葉だけで私は、幸せだった。

にっこりと両親に笑いかけると、半分ほど溶けてしまった蝋燭を、静かに吹き消した。

それははじめて味わった暖かい闇だった。




大きなケーキを三人でペロリと平らげ、楽しい食卓が終わった。

誕生日プレゼントにもらった大きな縫いぐるみを抱き抱え、ベットに入った。
横には母がいた。
前のように絵本を読んでくれた。

頭を撫でてくれる温かい手を感じながら、私は眠った。

母が泣いていた。


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