黒イ世界
すぐ隣の部屋だった。

中はしんとしていて、誰かいるのか疑わしかった。

ロッドが三回、戸をノックした。鉄特有の、金属音が辺りに響いた。



−コン コン


中から小さくノックが返って来た。


「僕だよ。開けて。」

鍵を開ける音がし、戸が開いた。

中から出て来たのは綺麗な女の人だった。

「ご飯の前に来るなんて、珍しいわね。どうしたの?」

「新しい子。紹介しにきたの。」

「そう。とりあえずお入り。」


そう言って、中へ入れてくれた。


部屋の広さは私の住む部屋と変わらないが、家具も内装もすべて、白と黒だけのモノクロの部屋だった。
部屋の中央にある小さな丸いテーブルの所へ座った。



「私は雪って言うの。あなたのお名前は?」

黒く背中まで伸びた髪が、あいた窓から入る風に揺れている。
さらさらしていてきれいな髪だった。


「奏です。」



「奏ちゃんか。よろしくね。」

優しく頭を撫でてくれた。
しかし、その手は信じられない位冷たかった。



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