黒イ世界
「ありがとう…」

「どういたしまして。
寒いし、どっかでごはんでも食べて帰ろっか。」

「…うん。」

ロッドが居れば、私は此処で生きていける。
大袈裟かもしれないが、嘘ではない。
あの両親の様に、私を捨てずに彼はずっと守ってくれると言った。
一度捨てられ、裏切られた私にとって、彼に裏切られることがなんだかなんだか何よりも一番恐かった。
突然居なくなるのが一番恐かった。

ロッドの手を掴んだ。彼は何も言わずに、私の手を握り返してくれた。

幼い時は同じくらいの大きさの手だったはずなのに、今ではロッドの手にすっぽりと納まってしまう。
温かい手だった。
あの頃と変わらない優しい手があった。
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