黒イ世界
私はずっと彼のそばにいた。目が覚めたときに、どうしてもそばにいてあげたかったからだ。
雪さんもずっと一緒に居てくれた。お互いあまり話すことはしなかった。重い空気がそこには流れていた。

西日が窓から差し込む頃、ようやく彼は目を覚ました。

「大丈夫…?」

「うーん…、駄目そうかなー。」

彼は笑顔で答えた。

「よかった、元気そうね。」

雪さんの顔にも笑みが零れた。

しかし、一つだけ気になる事があった。
彼の眼が何時もと違う色をしている。
元々、とても薄い茶色をしていた。けれど、今の眼は、深緑の硝子玉のような色をしている。
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