黒イ世界
「…治りはしないんでしょ?」

コンクリートの床を見つめたまま、ロッドは影澤に尋ねた。

「脳にまで転移したとなると、手術は無理かな。」


「そっか…。」

そう答えると、影澤がそっと席を立ち、すっかり暗くなった部屋に電気をつけ、カーテンをしめた。急に明るくなった部屋に、一瞬目がくらんだ。

「…なぁ、ロッド。君は僕を信じれるかい?」

しめたカーテンの方を向いたまま、影澤は言った。

「何を?」

影澤は、再び椅子に座り直し、おもむろに引き出しの中にあった瓶を取り出した。

「それ何?」
思わず、私は聞いた。
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