黒イ世界
開かれたドアの向こうにロッドの姿が見えた。

理性を失い、狂ったかのように暴れていた。大人が四人がかりでようやく押さえ付けている状態だった。

一歩中へ入りロッドの姿を見た瞬間、震えと吐き気が止まらなかった。



白い肌に、紅い花の模様が鮮明に浮かんでいた。

それも1つ2つではない。
顔、首、腕、指―――
血のような赤さだ。それは“綺麗”と言うより全身に返り血を浴びたようだった。



彼が苦しんでいるのに、何もすることが出来ない。
涙が頬を伝う。雪さんが大丈夫、大丈夫と繰り返し言いながら、強く抱き締めてくれた。


一晩中彼の叫ぶ声が、オレンジの満月が照らし出す夜に響いていた。



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