小さな気持ち
「お嬢様、バジルがお好きでしょう? ……なので今日は、バジルウィンナーにジュレを付けてみました」
得意そうに皿を置くと檸檬の斜め後ろに待機する執事。
檸檬は食事中、常に気になることがあった。
「・・・ねぇ、……林檎は、食べないの・・・?」
幼い頃からずっと疑問に思っていたことは、何故執事は一緒に食事をしないのか。
父母はそのことに疑問を抱かなかったらしいが、檸檬は幼心にずっと林檎の食事が気になっていた。
「私ですか? ・・・えぇ、職務が終わり次第頂いておりますよ。お気遣い、ありがとうございます」
柔和な笑みで言われ、歯痒い気持ちになる。自分の伝えたいことを上手く伝えられず言い倦ねているところに
「……ですが本日の職務はあまりありませんし、折角ですからお嬢様とご一緒してもよろしいですか?」
いつの間にか持って来ていた皿を置き、林檎は悪戯っぽく笑った。