小さな気持ち
「では、ご用がありましたらいつでもお呼び付け下さい」
そう告げると、颯爽と執務室へ向かう。
(いちばんの宝物、か……)
扉を閉め、念のため周囲を確認するとひとり微笑む。微笑みながら机に向かい軽く息を吐いた。
「…………それにしても、あんなに小さかった女の子が今ではもう・・・」
思い出すのは、食事中の出来事。
少女の両親と同じことをあの少女も言い、林檎は驚いた。
「奥様、旦那様。お嬢様は、お二方の望んだ通り、優しく育っていらっしゃいますよ」
呟く声は執務室に静かに消えた。