続・新撰組と妖狐ちゃん!
あたしは何も言えなくなり、
黙って箸を進めた。
そして、すぐ素麺を完食すると、
箸をお盆に置いて合掌しようと手を合わせた。
すると、
「ごちs「ごちそうさまでした」
あたしにかぶせるように言った沖田が
お盆を持ってスタスタと広間を出て行った。
そのお盆には、
「(…全然食ってねぇじゃん。)」
半分以上素麺が残っているのが見えた。
「「「…。」」」
そして、沖田が出て行った後の広間は
何とも言えない空気になってしまった←
皆、沖田の事を心配してるんだ。
島原から帰ってきて一ヶ月。
その前の池田屋事件の辺りから、
沖田の体調は悪い。
本人はあまり表に出さないけど、
部屋からはたまに咳が聞こえたり、
巡察中にふらっと消えて戻ってきたり。
さらに、巡察中の甘味処への寄り道が少なくなるという、
今までの沖田ではあり得ない症状が出てきていた←
いや、寄り道しなくなったのはいいんだけどさ←
島原から帰ってきてすぐ、
あたしは沖田に治癒能力を使おうとしたが、
毎回毎回、
『襲うよ?』とか、
『殺すよ?』とか、
脅してきやがり。←
挙げ句の果てには、
妖怪って事がバレるから
治癒能力は外では使えないため、
わざと人ごみの中に逃げ込んだり。←
この一ヶ月、
全てうまくかわされたのだ←
治癒能力は、屯所内でも幹部の前か、
誰もいない所じゃないと使えない。
こんなんじゃ、いつまで経っても
あいつの咳は治らないじゃん。
はぁ…とあたしが溜息をつくと、
近藤さんが苦笑いして言った。
「総司は昔から負けず嫌いだからなぁ。
それに何でも一人で解決しようとするから…」
「…風邪も自分で治すって事かよ。」
土方も溜息をついた。
沖田の病状が咳だけではない事を
知っているあたしは、
何だか物凄く申し訳なくなった。
「…っ」
病状を知っているのに、
それを治す事が出来るかもしれない力も持っているのに。
その場にいるのがキツくなったあたしは、お盆を持って、そっと部屋を出た。