【短編】キラキラ赤ずきんとドSオオカミ
やっぱり
「いた」
屋上。
郁は壁の近くで体育座りをして泣いていた。
壁に背をもたれ、顔を脚の中に隠すように丸くなって。
俺は郁の右隣に行って、静かに座った。
郁は静かに泣いている。
俺は黙って郁の左手を握った。
郁は握られたまま、声を上げて泣き始めた。
俺は郁の手を握ったまま、空を見た。
だんだん暗くなりつつある。
郁の指は俺の温度を受け、冷たくなくなっていた。