アイシテルSS
でも、問題はここから。
何も言わずに黙っている伸也さんは、余計に怖い。
怒鳴られる前に逃げ出そうか……
それとも、何もなかったかのように
「帰るね」
と立ち去ろうか。
どちらにしても、この場所に留まるという選択肢はないみたいだ。
尋常ではないほどの汗をかいている手のひらを握りしめ、体を玄関の方へと向けた。
「どこへ行く?」
すると、地響きかって思うような低い声が背後から聞こえた。
「帰ろうかと……」
「言い逃げか?」
確かに言い逃げだけど……
この空気の中、ここに居座れる人がいるなら、教えて欲しい。