フラグ
5st.flag~第五のフラグ
その日、寝る前「結婚」について考えた。
俺は、誰と結婚するんやろ?舞は兄妹だし無理なのはこの頃でも分かっていた。
じゃあ佐知子?
確かに子供の頃から俺は勝手に、佐知子と結婚すると思っていた。
たが実際には、その前提の「付き合う」とか「恋人」とかがある。
だったら、どのタイミングで「付き合う」んだ?
幼なじみだからこその悩みかもわからないが、例えば田中だったら俺から「交際」を申し込む、フラレなかったらだが「付き合う」「恋人」「結婚」という流れは想像出来る。
佐知子とは、何もしなくても一生このまま一緒にいる気がしてたが、今日の何気ない舞の「さっちゃんにフラレたら・・・」という言葉が頭の中を駆け巡る。
確かに、そんな事もあるだろう。
というより、その可能性の方が大きいかもしれない、何故なら佐知子は「モテる」のだ。
佐知子自身からは聞いてないが、ラブレターは小学生の頃から色んな奴から貰ってるらしいし、中学生になってからは何人かに告白もされていると聞いた。
そういう情報は、健太から逐一入って来る。
まあ、佐知子の情報以外でも逐一入って来るんだが、健太の情報はかなり正確だ。
そういう事も踏まえて、例えばこの先、佐知子が告白されてOKを出し、結婚まで行ったら必然的に俺は佐知子と「結婚」はおろか一生このまま一緒にいるという事もなくなるのでは?
でも今、佐知子の事が好きかと言われればどうなんだろう?
嫌いではない、それは間違いないんだが一人の女性として「好き」か?と言われたら、わからない。
その日は、こんな事を延々と考えて知らない間に寝ていた。
「大人になったら結婚しようや!」
「ええよ!大人になったらぜったいしよ!」
母親が、舞が入っているお腹を撫でながら微笑みながら見守ってくれている。
相変わらず、女の子は綺麗な髪の毛をしている。
次は、滑り台を滑りながら会話の続きを交わしている。
会話の続きを交わしているのは分かるし女の子の口が何か言っているんだが声が聞こえない。
俺も女の子に答えのような事を、口をパクパクさせているから言っているんだろうが、自分で何を言っているのか分からない。
女の子の顔も、相変わらず霧がかっているというか白い靄のような物がかかっている。
この夢を見ている時は、もう夢の中にいることは把握しているので、女の子の顔、聞き取れない言葉を、見ようと聞き取ろうとするが大事な部分は、やはり分からないまま目が覚める。
今日は、佐知子が1日部活あると言っていたので今日こそは1日ゴロゴロ出来る。
目が覚めても、ふと昨日寝る前に考えてた事を思い出した。
佐知子には、好きな人がいるのか?
俺は、佐知子の事が好きなのか?
あの夢の約束を佐知子は、どう思っているのか?
その前に佐知子は覚えているのか?
色んな事を考えた。
田中・・・
何故か田中の事が脳裏を横切った。
田中・・・田中は、俺の事をどう思ってるのだろう?
この間のプールでの会話で感謝しているのは分かったが、感謝と好意は違うのは俺でも分かる。
俺は、田中の事をどう思っている?
田中の事は、危なっかしくて気になるし、何かあれば助けてあげたい。
いや、そんな事より女性として「好き」か「嫌い」かというと嫌いな訳はない。
でも、「佐知子の事が好き」と「田中の事が好き」とは同じ好きでも違う気がする。
どう違うのかは分からないが、ただ違う事は分かる。
何故かモヤモヤする思いの中で今、結論を出す必要もない。
この事は、またゆっくり考える必要もある、でも今は置いておこうと思った。
もぞもぞと、ベッドから出て着替えて下の居間に下りた。
また、舞はいないみたいだ。
時計を見ると、午前11時31分だった。
最近は、寝る時以外で1人になることがなかったので、何をしたらいいのか分からず、とりあえずテレビをつけてみる。
夏休み子供劇場のアニメがやっていて、とりあえず見る。
アニメの内容は、大きい女の子が小さい男の子が好きで、引っ付き回り男の子も「止めろ」だ「離れろ」と言うが、男の子もまんざらでもないっていう内容だった。
(これ夏休みになったら、いつもしてるな)
と思いながら、ボーっと見てた。
テレビアニメの女の子が「シュンスケ君だぁーい好き!」と言って小さい男の子を抱き締める。
男の子の方は、露骨に嫌な顔をする。
昨日までなら、何とも思わなかっただろう。
だが今日は違った。
「シュンスケも、強がらなくてもええのにな」
独り言を呟いた。
「テレビアニメに何文句言うてんの?」
後ろから声が聞こえた。
振り向くと、舞が立っていた。
「舞、家にいたんか?」
「うん、自分の部屋にいたで」
「そうか、今日も出掛けてるんやと思ってたわ」
「お兄ちゃんが起きて来るまで、本読んでた。」
「そうか、それよりテレビアニメに文句言うてたんやないで、Lちゃんがシュンスケ君好き言うてんのに強がっとるからな」
Lちゃんとは、テレビアニメの女の子の方だ。
「なんか、さっちゃんとお兄ちゃんみたいやな」
「はぁ!?なんでやねん!?」
「だって、さっちゃんってお兄ちゃんの事が好きやん」
「えぇ!?佐知子そんな事言うてんの!?」
俺は、ただびっくりした。
「さっちゃんは、そんな事言うてないけど、どう見てもそうやん」
小学校4年生でも分かるくらいなのか?
すると俺は、シュンスケ君と大差ない事になる。
「そんな事ないやろ?」
「お兄ちゃん気づかへんかったん?」
「気づくも何も、そんな風には見えへん」
「お兄ちゃん鈍感やねんな、さっちゃん可哀想」
「鈍感て・・・どこでそんな言葉覚えて来んねん」
舞の思い過ごしか?いや、舞は当たり前のように言っている。
かといって、嘘やジョーダンを言ってるようにも見えない。
「お兄ちゃんは?」
「ん?何が?」
「お兄ちゃんは、さっちゃんの事好きやないん?」
「そら嫌いな訳はないやろ、でも好きか言うたら分からんな」
「そうなんや・・・」
舞が凄く悲しそうな顔をする。
「とりあえず、昼にしよか舞」
「うん」
昼ご飯のカレーを食べながら、舞が口を開いた。
「お兄ちゃん?」
「どした?」
「もし、さっちゃんが好きやて言うたら、お兄ちゃんどうするん?」
「どうするやろな?そんな事ないと思うけど」
「お兄ちゃんフルん?さっちゃんやで?」
「俺は、このままが一番ええんやけどな、好きとかそんなんは、よう分からんねん」
その日の夜は、なかなか眠れなかった。
原因は、もちろん舞のまさかの一言だ。
そうだ、このままが一番いいと俺が望んでも、佐知子がそれを望んでなかったら「このまま」とは、いかないのだ。
佐知子だけでなく、あのメンバーの誰かがメンバー内で恋愛感情を抱く、そして失恋すると「このまま」ではいかないのだ。
あのメンバー全員のクラスがバラバラになって、メンバーがバラバラになるかもしれないと思っていたが、そんな事よりも深刻な問題である。
もし、もしも舞が言うように佐知子が、俺を異性として「好き」だとして俺にその気持ちを伝えて来たら俺は、どうする?
もし、俺と佐知子が付き合う事になっても、健太や花や田中もちろん舞は今まで通りだろう。
それとは逆に俺が、付き合う事を断れば、佐知子はこのメンバーから離れてしまうのだろうか?
それすらも分からない、というよりずっと佐知子が近くにいて当たり前だった。
だから、佐知子が居なくなるなんて想像すらできない。
そう考えると、もうまったく何もかもが分からなくなる。
万が一も考えられない。
「はぁー・・・」
もし佐知子が俺の事が好きでも、俺は誰が好きなのか分からない。
「シュンスケ君より、あかんわ俺」
独り言を呟いた。
だいたい、俺が誰を好きなのか分からない時点で俺が駄目なんだ。
その結論が出なければ、何をどう考えても何の解決にもならない。
明日あたり、花にでも相談しよう。
そう考えると、急に睡魔に襲われて眠りについた。
翌日、花の家に電話して花の家に行った。
花の部屋は、ガンプラは勿論の事色んなプラモデルやラジコンなど、ところ狭しと置いてあった。
「全部、花が作ったんか?これ」
「あぁ、この部屋の物は全部自分で作ったな」
「凄いな!やっぱ花は」
「ほんで、そんな話ししに来たんちゃうんやろ?」
「おぅ、ちょっと相談があってな」
「へぇ、隆にしたら珍しいな、何の相談や?」
俺は花のベッドに座って、花は勉強机の椅子をクルっと自分ごと回転させてベッドに座ってる俺の方に向いた。
一昨日から悩んでいる事、それから昨日の事を花に話した。
勿論、あの夢の約束の話しはしてない。
「なるほどな、モテる男は辛いねぇってよく言うけどな、ほんまなんやな、ハハハ」
「花、笑い事ちゃうで」
「まあまあ隆、ちょっと考え過ぎなんちゃう?」
「考え過ぎかな?やっぱ」
「俺から見ても、明神は隆の事を好きやと思うわ」
「考え過ぎちゃうやんけ!それやったら」
「まぁ待て、でも明神から隆に告白があったとしてもやな、隆は好きか分からんねやろ?」
「そうや」
「ほな、そのままそう言うた方がええんちゃうか?」
「それを言うて、佐知子と今まで通りやなくなるのが嫌なんや」
「そこは明神に、待ってもらえよ。明神にしても今まで通りが嫌やから告白するわけちゃうと思うんや、だから今まで通りで隆の気持ちが固まるまで待ってもらえよ」
「確かに、それしかないかもな」
「その先の事は、明神のほんまの気持ち聞いて隆の気持ちがどう変わるかで返事したらええんちゃうか?」
「うん、そうやな」
「こういうのはな、気持ちの問題やから隆がその時に、どんな気持ちか伝えたらええんや、それでどうなっても後悔はせんやろ?」
「その時その時の素直な気持ち言う事やな」
「そうや、変にうやむやにしたり嘘ついたら後になって、えらい事になりかねん」
「それもそうやな!やっぱり花に相談して良かったわ俺」
「そういう俺も、恋愛なんかしたことないけどな!ハハハハ」
「俺ら、今が楽しいからな」
「確かに、それもあるな!ハハハハ」
「それより、やっぱり健太にも言うといた方がええかな?」
「まだ言わんでええんちゃうか?言うたら一瞬で学校中に知れわたるぞ」
「それは嫌やな」
「言うてもまだ何にも無いんやし、ええやろ」
「そやな、今日はほんま助かったわ!何か奢るから商店街でも行こけ」
「おっ!ええな行こか!」
それから花と商店街に行って、世間話をした。
花は、気を使ってくれてるのか、それからは佐知子の話しはしてこなかった。
家に帰ったら、舞と佐知子がいた。
佐知子を見て「ドキッ」っとしてしまった。
俺の方が、変に意識をしてしまう。
舞「おかえり」
佐知子「おかえりぃー隆ちゃん」
俺「やぁ君たち!ただいま」
佐知子「なんなん?それ、あはは」
舞「どこ行ってたん?」
俺「あぁ、花の家や」
舞「そっか」
佐知子「ああ!!そうや!隆ちゃん隆ちゃん!舞も聞いて!」
俺「何や?やかましいなお前は」
舞「さっちゃん、どうしたん?」
佐知子「明後日な!商店街で夏祭りやで!行こ行こ!」
舞「ほんま!?行こ行こ!」
俺「よっしゃ!来たな夏祭り!明日みんなに連絡しとくわ!」
佐知子「美幸と茜ちゃんも来るやんな?」
俺「たぶん来るやろ」
佐知子「ほんなら、ここ集合場所にしよ」
俺「健太はええとして、後はここ通り道やもんな、分かった明日連絡しとくわ」