フラグ
8月14日、バーベキュー当日。
昼から佐知子と佐知子の両親がやって来た。
その日の昼ご飯は、佐知子と佐知子のお母さんが昼ご飯を作ってくれた。
佐知子のお父さんは、俺の家の庭でバーベキューの準備をしている。
家の庭は、まあまあの広さがある。
そこにバーベキューコンロ、タープを立てて、タープの下にテーブルと椅子、更にその向こうにはテントを立てていた。
ただただ手際の良さを関心した。
佐知子のお父さんは、あっという間に家の庭をキャンプ場に変身させた。
後は、夕方にみんなが来るのを待つだけだ。
やはり一番早く来たのは健太だった。
しばらくして田中姉妹が来て、すぐに花もやって来た。
田中姉妹は佐知子の両親に、礼儀正しく挨拶をしていた。
佐知子のお母さんの知子さんも「礼儀正しい姉妹やね!佐知子とはえらい違いやわ」と言っていた。
佐知子「そんな事言うてもウチ、お母さんの子供やもん!あはは」
真佐雄「そうやな、お前らよう似とるもんな」と佐知子のお父さんが言った。
佐知子「ちょっとお父さん!どこが似てんのよ!?」
真佐雄「さぁバーベキュー始めようか!佐知子、肉と野菜持って来てくれるか?」
佐知子「はいはい!」
さすが佐知子のお父さん、佐知子の扱いが上手い。
舞「やった!」
真佐雄さんに田中は「私も何か手伝える事ありますか?」
真佐雄「うん、ほんならあっちに割り箸と紙皿があるから持って来て貰えるかな?」
その時、俺と健太と花は真佐雄さんに言われて火の着いた炭を、うちわで扇いでた。
真佐雄「そろそろ炭に火がついたな」
真佐雄さんがハサミで炭をならして上に網を乗せた。
佐知子が肉と野菜を持って来て真佐雄さんが肉をどんどん網の上に乗せて行く。
たまに野菜も乗せる、勢いよく焼きめが付いていく。
真佐雄「佐知子と隆ちゃん、みんなにジュースを紙コップに入れて渡してあげて、お母さん缶ビール持って来て!」
知子「お父さん、はい!」
俺と佐知子も全員の分のジュースを渡した。
知子「ほな、みんな乾杯しようか!」
みんなジュースの紙コップを前に出した瞬間、知子さんが「かんぱ-い!!」
全員「かんぱ-い!」
真佐雄「そういう事は、率先してやるよね?お母さん」
知子「それがお母さんの仕事やん!あはは」
俺と健太と花は、黙々と肉を食った。
真佐雄さんと知子さんは、缶ビールを飲みながら談笑し、つまみ感覚で肉と野菜を食べていた。
茜ちゃんも肉が好きなのか、黙々と食べている。
かなりお腹も膨れて来たところで、花火をすることになった。
茜「茜これしたいー!」
佐知子「じゃあ茜ちゃんしっかり持って、ここで火つけて」
茜「着いた着いた!綺麗!」
俺「コラ健太!振り回すな!」
花「うわうわ!こっちに向けんな!健太」
舞「お兄ちゃんお兄ちゃん!これやってこれ!パラシュート出るやつ」
健太「よっしゃ!パラシュート誰がキャッチ出来るか勝負や!」
俺は、パラシュートが出る打ち上げ花火を立てて点火した。
「ポンッ!!」
「パンッ!!」
上空でパラシュートが開いた。
俺「健太!逆方向やぞ!あははっ」
舞と茜ちゃんは、いい場所にいた。
テントの向こう側にパラシュートが落ちて来て、舞と茜ちゃんが二人で受け止めた。
舞「やったー!」
茜「取れた取れた!」
舞「パラシュート、茜ちゃんにあげる」
茜「ありがとー舞ちゃん」
何故か健太は、拗ねていた。
花火も、もう線香花火しかなくなり、みんなで線香花火をした。
佐知子「線香花火ってええやんね」
田中「うん、何か色々考えてしまうけど、綺麗やんね」
健太「落ちる時、なんか切ないけどな」
舞「舞の線香花火、落ちる前に消えた」
健太「それはそれで切ないな」
花「切ないって言い過ぎやお前」
俺「健太の頭が切ないわ」
健太「髪の毛の事か!?」
佐知子「あはははは」
線香花火も終わって、花火は全部終わった。
夜も、遅くなって来たので佐知子の両親を残して田中姉妹を、みんなで家に送って行く事にした。
みんなで送って行く時に俺は「田中、また明日朝から俺んちにこいよ」って言った。
田中「うん、朝またお邪魔するね」
佐知子「美幸たちも一緒に泊まれたら良かったのにね?」
茜「もっと遊びたかったな…」
花「また明日も遊べるしな」
健太「今日は、しゃーないな」
田中「みんなごめんね、途中で帰るのに送ってもらって」
俺「気にすんなって」
田中の家まで送って、また俺の家にみんなで戻った。
健太がテントでトランプしようって言うのでテントでトランプをした。
真佐雄さんが、ランタンという明かりをテントの中に付けてくれた。
テントの中でするトランプは、また違った感じがして妙に楽しかった。
今日は、健太と花がテントで寝て佐知子はリビングで寝袋で寝るらしい。
そんな話しをしながらトランプをしていたら母親が帰って来た。
真弓「ただいま、あっ!真佐雄さん色々ありがとうございます」
真佐雄「いえいえ、場所を提供してもらってこっちが楽しませてもらちゃって」
知子「真弓お疲れ様!そんな話しはええし飲も飲も!」
真弓「知子相変わらずやね、ちょっと待ってて着替えて来るから」
母親が帰って来たので、一旦テントから出て舞と母親のところに行く事にした。
舞「お母さん、おかえりなさい」
俺「おかえり」
真弓「舞ただいま、お利口さんにしてた?隆、いつもごめんね仕事ばっかりで」
舞「舞は、いつもお利口さんやで!」
俺「ええよ、俺らの為やねんから」
真弓「隆も舞も、バーベキュー楽しかった?」
舞「うん!お肉美味しかったし、花火綺麗やったし楽しかった!」
俺「母さんも、今から佐知子のお母さんと、肉食べてビール飲んだら?」
真弓「そうするわ、たまには息抜きもせなあかんし、明日休み貰ったからお母さんも楽しむわ」
俺「うん、俺らはもうちょっとしたら寝るけど」
舞「もう寝るの?」
俺「明日も遊ばなあかんしな、あんまり遅くまで起きてたら明日遊べへんで?」
舞「うー…」
真弓「そうやな、そこそこしたら寝なさいね」
そう言って母親は着替えて、知子さんとビールを飲んで談笑し始めた。
母親は、本当に楽しそうに佐知子の両親と話していた。
そろそろ明日の為に寝ようと言う事になって、健太と花はテントで寝る事になった。
テントの中は、三人寝るとちょっと狭いので俺と舞は自分たちの部屋で寝る事にした。
佐知子は、リビングで寝袋で寝るらしい。
真佐雄さんはリビングのソファーで寝ると言っていた。
俺は、自分の部屋のベッドで横になり電気を消して寝る事にしたが、大人も混じっての遊びというのも久しぶりだったので、凄く楽しかったなっと思っていた。
色々今日のバーベキューの事を思い出して、うとうと仕掛けた頃に俺の部屋のドアが開いて誰かが入って来た。
「隆ちゃん?起きてる?」
佐知子だ、俺はうとうと仕掛けていたが「まだ起きてるぞ」と言った。
電気を点けようとした俺に佐知子が「電気点けんといて」と言ってきた。
俺のベッドの縁に座り、「隆ちゃんあのね…」と言って言葉を切った。
俺は、佐知子の言葉を待った。
佐知子は、何を言い出すんだろう?ただそう思った。
「隆ちゃんと、なかなか二人きりになれへんくて言えなかったんやけど」
「佐知子らしくないな、どうした?」
「隆ちゃんの回りには、いつも舞とか中嶋とか花井、美幸とかいたし」
「うん」
「前にパンジョ二人で行ったときは、言えへんかってんけど」
「うん」
「ずっと隆ちゃんの事、好きやってん…隆ちゃんはウチの事どう思ってる?」
俺は、意外に早くこの時が来たと思った。
花に言われた「その時の素直な気持ち」でも実際、あの時から気持ちも変わってない。
「佐知子」
「うん…」
「この前、舞に佐知子は俺の事を好きやねんでって言われたんや」
「さすがに舞も気づいてたんや…」
「みたいやな、それから佐知子の事を良く考えたんや」
「うん」
「佐知子とは長い間一緒にいて、俺はずっと佐知子と一緒にいると思ってたけど、どっちかに彼氏とか彼女が出来たら一緒におれんようになるんかな?とか」
「うん」
「ずっと一緒にいたから、そんな事も今まで考えた事なかったし、佐知子には感謝しきれへんくらい色々助けて貰ってきた」
「そんな事ないで…」
「でもな佐知子、俺は佐知子の事を好きやけど、それは友達としてなんか女の子として好きなんかわからへんねん」
「うん…」
「それは佐知子だけやなくて田中もそうやねんけど、俺は、今まで通りにみんなと一緒にアホな事やっていきたい」
「うん…それはウチもそうやで…でも最近、隆ちゃんは美幸が好きなんかな?って思って、だからせめてウチの気持ちを言わなって思ってん、隆ちゃんが美幸の事を好きでもええしウチは好きやって伝えたかっただけやねん」
「田中の事は…好きか嫌いかって言われたら好きやけど、それが恋愛の好きかって言うたらわからへん…けど…佐知子とは違う感情があるかもしれん」
「それがLikeの好きやなくてLoveの好きなんちゃうの?」
「それが俺にはまだ分からへんねん」
「そっか…ウチは、ずっと隆ちゃんの事これからも好きやから…ただそれだけ」
「佐知子…ありがとう…」
「でもウチ、モテるから隆ちゃんがモタモタしてたら誰かの彼女になるかもしれんで、あはは」
いつもの憎まれ口を叩く佐知子とは違う、もしかしたら泣いているのかも知れないが暗くてよく分からない。
「佐知子がモテるんは知ってる、ほんで俺がモテへん事はもっと分かってる、あははっ」
「隆ちゃんは見た目が怖いからな、ても隆ちゃんの中身を知ってる人はみんな隆ちゃんの事好きやと思うで、たぶん美幸も…」
ドキっとした。
田中が俺に恋愛感情を持っているとは、俺は考えた事なかった。
「それはないやろ」
「さぁ?隆ちゃん鈍感やしなぁ」
「あぁ鈍感は鈍感やなたぶん、舞に言われるまで佐知子の気持ちも分からんかったし」
「隆ちゃん、ごめんね…そろそろ寝てくる」
佐知子はベッドから立ち上がって言った。
「あぁ俺の方こそ、ごめん…」
「そんなん言わんといて、ウチフラれたみたいやん、あはは」
「そいやな、気持ち…佐知子の気持ちは分かったから…」
「うん…おやすみ…」
「おやすみ…」
そう言うと佐知子は部屋から出て言った。