フラグ
田中「うん、それでちょっとは滑れるかな?川上君は大丈夫なん?」
俺「俺も、あんまり上手くないけど、それくらいやったら大丈夫やと思う」
向こうでは、佐知子と健太がリンク一周で勝負するところだった。
舞が「位置についてぇー…よぉーい…ドン!」
舞の掛け声と共に佐知子と健太の二人は一斉に滑り出した。
俺「ちょっと田中練習止めて、あの勝負見よう」
田中「うん、二人共速いなぁ…」
第一コーナーは佐知子がインコースを取ったが、健太は第二コーナーにアウトからインコースに斜めに入って佐知子を抜く、しかし第二コーナーをアウトからインコースに斜めに進入したので第三コーナーで外側に膨らみはじめた。
外側に膨らみはじめたのを、更に佐知子がインコースから抜きにかかる。
健太は、膨らみはじめたのを堪える為に体を更に斜めに倒した。
佐知子が健太を抜くか抜かないかと言う一瞬の事だった。
健太のスケートシューズが遠心力に耐えられず健太は転けた。
健太「アァァァァ!」
健太は、脇腹で滑り一直線に手すりが付いてる下の板に激突した。
「ドゴンッ!!」
凄まじい衝撃音がして、スケート客がみんな健太を見た。
舞「あははははは!」
花「はははははは!」
茜「きゃはははは!」
佐知子は、ガッツポーズでウイニングランをしながら爆笑し、もう一周していた。
俺と田中も大笑いだった。
健太は、舞たちがいる所に戻って「本気で死ぬかと思った」と言っていた。
花「おかえり!氷上のプリンス!はははははは」
健太「うるさい!ちょっとは労りの言葉はないんか!?」
舞「ないない!」
茜「健ちゃん大丈夫ぅ?」
健太「あぁ、大丈夫やで、優しいのは茜ちゃんだけやわぁほんま」
茜「ほんじゃあ、健ちゃんもう一回して!」
健太「出来るかぁ!?」
茜「きゃはははは」
舞「あははははは」
花「はははははは、健太もう一回やったれよ!」
健太「くっそー!」
俺「踏んだり蹴ったりやな健太」
田中「ウフフフフフ」
みんなの所に戻って来た佐知子は、茜ちゃんの手を持って茜ちゃんに滑り方を教え出した。
俺も、田中の片方の手を持って少しずつ滑るのを教え出した。
しばらくして、田中は手刷り無しで俺の手だけで滑れるようになって来た。
佐知子は、茜ちゃんの両手を持って後ろ向きに滑って教えていた。
俺は、田中の手を緩く持つようにしていったが、かなり上達してきたので手を離して少し距離を取った。
俺「ほな田中、俺の所までゆっくり滑ってみ」
田中「うん」
田中は、少しずつ俺の方に滑って来る。
あと少しという所で田中はバランスを崩した。
俺は、咄嗟に田中の手を掴んだが田中は尻餅をついた。
その瞬間、田中は物凄い勢いで俺の手を引っ張った。
俺は、一気に田中の方に引き寄せられる。
俺は田中の上に覆い被さるような状態になって、田中の顔と俺の顔が数cmの所で手をついた。
田中の顔をこんなに近くで見た事はなかった。
何故か鼓動が高くなり、感じた事のない気持ちになった。
田中「川上君…ごめんね」
俺「あ…あぁ、大丈夫か?」
俺は、立ち上がり田中の手を差し出した。
田中も、俺の手を取り立ち上がる。
近くにいた舞が来て「美幸ちゃん大丈夫?」と田中に聞く。
田中「うん、びっくりしたけど大丈夫」
舞「お兄ちゃん、美幸ちゃんとチューするんかと思ったわ」
俺「アホ、でもギリギリやったな」
田中は、顔を真っ赤にさせながら「ほんまに…ごめんね川上君」
俺「ええってええって気にすんな、あははっ」
舞「3人で手繋いで滑ろう」
俺「そうやな、でもちょっと休憩してからにしようか?田中疲れたやろ?」
田中「そうやね、さすがにちょっと疲れた」
俺「舞もジュース買ったるから休憩や」
舞「やった!」
近くで茜ちゃんと滑っている佐知子にも「休憩行くぞ!」と声をかけた。
リンクの外に出て、舞と田中はベンチ座った、俺はジュースを4本買ってベンチに戻る。
ベンチに座っている佐知子と舞と田中姉妹にジュースを渡した。
田中「あっ!ありがとう、お金あとで返すね」
俺「ええって奢りやし」
田中「あかんの、返すから」
俺「相変わらず律儀やな」
佐知子「ウチはゴチになります!あはは」
4人でジュースを飲みながら、リンクの中を見ると、健太と花がいい感じで滑っている。
俺「なんだかんだで、みんな滑るの上手いな」
田中「ほんまに上手いやんね」
舞「舞も、あれくらいスイスイ滑れるようになりたいなぁ」
佐知子「すぐ滑れるようになるって舞、慣れみたいな物やし」
茜「さっちゃん、茜も滑れるようになる?」
佐知子「なるなる!もうだいぶ滑れるようになって来たやん♪」
俺「たまに後ろ向きに滑ってる人おるけど、原理がわからんなアレは」
佐知子「前と後ろが違うだけやん」
俺「そこが大違いやろ」
佐知子「シューズの後ろを外側に滑らせていくん、前に進む時はシューズの前側を外側に滑らせていくやろ?その逆」
俺「言うのは簡単やけどな」
佐知子「んじゃちょっと見てて」
佐知子はベンチから立ち上がりリンクの中に入って行った。
佐知子「シューズの後ろを、こう滑らせすの」
そう言うと後ろ向きに滑って行く。
そのまま佐知子は、後ろ向きのまま勢いよくリンクを一周し出した。
田中「凄い綺麗…」
俺「何者やねん?あいつ」
舞「さっちゃん凄い凄い!」
茜「茜も、あんなん出来るようになりたい!」
佐知子が後ろ向きで一周して戻って来るて、みんな拍手していた。
ただ、この男は違った。
健太だ。
健太「明神、バックでどうやるん?」
佐知子「じゃあ、そこのちょっと角で教えてあげる」
佐知子と健太は、人が少ないリンクの角に行ってバックを教えてもらっていた。
花もリンクの外に出て来て、俺たちはリンクの角に近いベンチの方に移動した。
健太「なるほどな!よっしゃわかったで!お前ら見とけ、プリンスのバックを!」
俺は、笑いの神が健太に降りるように祈った。
健太は、右足を後ろに勢いよく滑り出した。
下半身だけが勢いよくバックして、凄い勢いで前に転けた。
健太「がっ!!」
ゴンッ!という音とバタッ!という音が混じりあった音がした。
俺「あはははははっ!」
舞「あははははは!」
田中「ウフフフフフ!」
茜「きゃはははは!」
花「はははははは!」
佐知子「あははははは!中嶋大丈夫?あははははは」
花「大したプリンスやな!ははは」
健太「くっ!痛すぎる…」
健太が、自力で立ち上がる。
舞「ぷーっ!あははははは!」
舞が健太を見て、吹き出し笑いをして全員気づいた。
健太は、転けた時に広いデコを氷に打ち付けたみたいで、デコの真ん中が日の丸の旗のように丸く赤くなっていた。
俺「あはははははっ!健太!デコが日の丸や!」
花「ほんまや!大和魂や!はははははは!」
田中「ウフフフフフ!」
茜「きゃはははは!」
佐知子「プリンスやのに日の丸!?あははは!」
健太「やかましい!というか頭割れそうに痛い…」
その後、みんな死ぬほど笑って昼ごはんにした。
スケート場にある売店で、買って食べる事にした。
昼ごはんを食べ終わって、早速みんなスケートリンクに戻って滑りはじめた。
俺と舞は、田中の手を持ってスケートリンクを回りはじめた。
田中を真ん中にして、左側に俺で右側に舞がいる状態で少しずつ滑る。
一周する頃には、転けそうになる事も減ってきた。
茜ちゃんの方は、もう何とか一人で滑りはじめていた。
舞「茜ちゃん、凄い!」
田中「茜、もう一人で滑れるようになったん!早いなぁ」
俺「田中も、もう何とか一人で滑れるんちゃう?」
田中「えぇ?どうかな?自信ないけど」
舞「美幸ちゃん、ちょっと一人で滑ってみたら?」
田中「うん、ちょっと一人で滑ってみる」
俺と舞は、田中の手を離して少し距離を取って田中が滑って来るのを待った。
佐知子「あっ!美幸、一人で滑るの?」
田中「うん、頑張ってそこまで行くから佐知子」
佐知子「うん、頑張って美幸」
田中が少しずつ滑って来る。
少々危なっかしいが、少し離れた俺たちの所まで来れそうだ。
少しずつ俺たちに近づいて来て、俺と舞と佐知子は田中に手を伸ばした。
俺たちの手を、田中は掴んだ。
田中「やった!」
俺「田中、やったやん!」
舞「美幸ちゃん滑れた!」
佐知子「美幸おめでとう♪」
茜ちゃんも、こっちに向かって来て「やった!お姉ちゃんも、一人で滑れた!」と言って喜んでいた。
それでも、まだまだ危なっかしいので、みんなで手を繋いで滑った。
みんなで滑っていたら、健太と花がやって来て「隆!あっちの壁の向こうに凄い奴らがおるぞ!」と言ってきた。
健太が指を差した方を見ると、リンクの端の壁だった。
どうやら、スケートリンクの一部を仕切っている壁みたいで、壁の向こうにもスケートリンクは繋がっているみたいだった。
俺「よし!見に行こ」
佐知子「行こ行こ♪」
舞「舞も、行く!」
田中「佐知子、手引っ張って」
佐知子「うん、茜ちゃんも行こ♪」
茜「うん!」
みんなでリンクの外に出て壁の向こうの方に行ってみた。
やっぱり壁の向こうにもリンクは繋がっていて、スケートリンク全体の3分の1くらいが仕切ってあった。
その仕切ってあるリンクの中には、舞くらいの女の子から高校生くらいの女の子が滑っている。
ただ、違うのはレオタードみたいな本格的な格好をしている。
良く見てみると、格好だけじゃなく動きも全然違った。
後ろ向きで、凄い勢いで滑っていると思ったら、飛び上がって空中で回転して着地したり、その場でとんでもない勢いで回転したりしていた。
佐知子「フィギュアスケートやん!綺麗やねぇ」
俺「人間技やないな、これは」
田中「凄い…」
舞「カッコいい!」
茜「うわぁ…」
健太「なっ!凄いやろ?」
俺「凄いな、スケートでこんな動き出来るもんなんやな」
佐知子「凄い練習せな出来ひんやろうなぁ」
それから、しばらくみんなフィギュアスケートに釘付けだった。
しばらくみんなで見ていたが俺が「ほな、もうひと滑りしようか」というと、みんなまたリンクに戻って滑り出した。
夕方頃まで滑って、田中も一人でなんとか滑れるようになった。
茜ちゃんは、もう一人で結構なスピードで滑れるようになっていた。
時間も時間なので、帰ることになった。
みんなでいる時間はあっという間に過ぎて行く。
帰りの電車でも、スケートの話しで盛り上がり駅に着いた。
駅に着いて、家が逆方向の田中姉妹と別れて俺の家で健太と花と解散して、俺の家で舞と佐知子で晩御飯を食べた。
俺はこの時、みんなといる充実した時間が永遠に続いて行くと思っていた………