フラグ
10st.flag~第十のフラグ
田中「んーん、ええよ川上君が気持ち言うてくれへんかったら、私自分から言えへんかったもん」
俺「好きな気持ち我慢するのって辛いやんな」
田中「うん、辛かった」
「でも、私は川上君と離れた場所に行ったから耐えられたんかも」
俺「えっ?田中いつから?」
田中「ずっと前から…」
俺「だから、それいつなん?」
田中「屋上で昼御飯食べるようになってからかな?」
俺「えぇ!?そんな前からなん!」
田中「うん、だからずっと前からって言うたやん……」
俺「全然気付かへんかった……」
田中「我慢してたんやもん……」
俺「何か悪いことした感じやな」
田中「でも、過去があるから今があるんやしいいやん」
俺「まぁ、そうやけど」
田中「また出会えた事に感謝せなあかんね」
俺「ほんまやな」
田中「私よりもっともっと前から、佐知子は川上君の事が好きやったはずやし、私は川上君に一生自分の気持ちを伝えられへんと思ってた……」
俺「そう言えば、佐知子が初めて俺の事好きやて言うた事って田中に言うたんやったな……」
田中「うん、あの事があったから…………私は一生自分の気持ちを我慢するって決めた」
「今でも川上君には佐知子の方が私より良いと思ってる」
俺「田中……」
田中「今、佐知子に川上君以外の彼氏がいて、川上君が私の事が好きやて言ってくれて……私も川上君がずっと好きやった…」
俺「………」
田中「それでも川上君には佐知子なんやと思う私がまだいる」
俺「田中……俺は…お前が好きや……どんなけ時間が経っても変わらへん」
田中「うん……ありがとう…」
小さい時から俺の後を付いてきてた佐知子も今は、独りで歩き出した。
それはそれで寂しかったが、俺は俺で独りで歩き出した。
田中はずっと独りで歩いて来て、たった1年間だけ俺たちと一緒にいたが、また独りで歩いて俺と再会した。
色んな道をみんな歩いて生きて来た。
俺「これからは、また一緒に居ようや…」
田中「うん」
俺と田中は、しばらく無言で海を見ていた。
俺は、田中に「付き合ってくれ」という事は言わなかった。
俺と田中の止まった時間は、また再び動き始めたばかりだ。
その止まって動き始めた時間が、この二日間で凄い勢いで進んだ事だけで俺は十分だった。
ここから先は、また同じ時間を過ごして行きたいから、俺はあえて「付き合ってくれ」とは言わなかった。
言うのは今じゃない気がしたからだった。
そうこうしている内に、祭りも終わるみたいだった。
俺「祭りも終わりみたいやな」
田中「そうやね」
俺「そろそろ行こか」
田中「うん」
俺と田中は、屋台が建ち並ぶ中を歩きながらバイクが停めてある場所に行ってみた。
バイクの場所まで行くと、健太たちも花たちももうバイクのところにした。
健太「おぅ!隆も来たで花」
花「おぅ隆、楽しんだか?」
俺「やっぱり祭りはおもろいな」
友子「美幸美幸ぃ!祭り面白かったねぇ」
田中「うん、面白かったね」
いつか「友子、別行動やったのにその会話変やない?フフフ」
友子「変?でも面白かったよ?」
いつか「まぁいいけど」
俺「それはそうと健太、今回はひよこ釣りしてへんやろな?」
健太「もう鶏増やしたら、おかんに殺されるわ俺」
花「健太でも学習するんやな、ハハハハ」
健太「やかましい!」
田中「ウフフフフフ」
俺「あははははっ」
友子「ひよこ?」
俺「友子ちゃん後で田中にひよこの話しゆっくり聞いてみ、笑うで」
健太「友子ちゃん、聞かんでええからね」
友子「美幸ぃ、後でひよこの話ししてぇ」
田中「うん、後でね」
花「ほな帰ろうか」
俺「ちょっと待て、田中明日帰るんやろ?」
田中「うん、明日朝10時にホテル出るけど」
俺「明日、駅まで送って行くわ」
花「そやな、そうしよか」
田中「ええの?」
友子「ええのええの!送ってぇ健ちゃん!キャハハ」
健太「送る送るぅ!」
俺「ほな朝10時に行くわな」
田中「うん、ごめんね」
俺「えぇって、ほなとりあえず帰ろか」
健太「よっしゃ!行こう」
俺たちは、田中たちをホテルまで送って行った。
ホテル前まで行って、その日は終わった。
民宿に戻ったら健太が「友ちゃんと明日お別れかぁ……」と落ち込んでいた。
花「まぁ、出会いがあれば別れもあるからな」
健太「そんな事ない!俺と友ちゃんは一生一緒にいるんや!」
俺「何、子供みたいな事言うてんねん」
健太「それが大人や言うんやったら、俺は子供のままでええんや!」
花「はいはい、子供はもう寝ろ」
俺「そやな、うるさいし寝ろ」
俺も健太の気持ちが、まったく分からないわけではなかった。
だが、花が言う出会いと別れは既に経験している。
「また会える」と思っていたから俺は平然としてられた。
次の日の朝、早めに起きて俺は朝風呂に入って帰り支度をした。
朝食の時間を済ませて、最後の海を眺めに民宿の外に出た。
今日も夏のギラギラした日差しと熱気が俺を襲う。
あの防潮提の上に登って、海を眺めていた。
もう今年は海を見る機会がないだろう。
しばらく海を眺めて民宿に戻った。
民宿で朝食を食べて、民宿の女将さんにお礼を行ってまとめた荷物を玄関まで持って行く。
本当に充実した旅行になった。
しかも、田中と再会が出来た。
そんな事を考えていると花が「まだちょっと時間があるから今のうちにガソリン入れに行こうや」と言って来た。
俺「そやな」
先にガソリンをガソリンスタンドに入れに行き帰って来ると、田中たちを迎えに行く時間になった。
田中たちのホテルに行くと、日陰で三人とも待っていた。
俺「おはよう」
みんな軽く挨拶をして、バイクに荷物と田中たちを乗せた。
田中たちの荷物があるので、俺たちの荷物はまだ民宿に預けてあった。
田中「とうとう帰るんや…」
俺「ずっとここに居たいけどな、あははっ」
田中「うん」
俺「ほなみんな行こか!」
花「行こう」
田中「中嶋君も花井君もありがとう!」
俺はバイクのエンジンをかけた。
健太と花もバイクのエンジンをかけた。
俺は駅に向かってバイクを走り出した。
ここから駅まではバイクですぐに着く、俺はバイクを走らせながら色々な感情を抱いていた。
駅に向かう途中で信号が赤に変わる。
俺は信号で止まって「田中?」
田中「どうしたん?」
俺「電話、待ってるしな」
田中「うん!帰ったらすぐに電話するから!」
俺「俺も、京都に遊びに行くからな」
信号が青に変わってバイクが発進する瞬間に田中が「うん!」と言った。
駅前に着いて、田中、友子ちゃん、いつかちゃんが荷物を持ってバイクから降りた。
いつか「みんなほんまにありがとう!」
花「ええって、俺らも楽しかったし」
友子「健ちゃんまたね~」
健太「友ちゃんまたね~」
俺「みんな気つけてな」
田中「うん!川上君も中嶋君も花井君も色々ありがとう!」
俺「おぅ!ほなな」
田中たち三人は手を振って見送ってくれる中、俺たちはバイクを発進させて手を振って駅を後にした。
一旦民宿に荷物を取りに行き、民宿の人たちに一通りお礼を言って地元に向けて出発した。
色んな思いを胸に、バイクを走らせ帰路に着いた。
さすがに三人とも疲れがあったので早々に別れて家に帰った。
家に帰ると母親と舞が仲良く話していた。
俺「ただいま」
舞「あっ、お兄ちゃんおかえり!」
真弓「隆おかえり、楽しんできた?」
俺「あぁ面白かったで、こんなんしかなかったけどお土産」
舞「饅頭?お母さん食べよう」
真弓「そやね、隆のお土産でも食べようかな」
俺「俺は、とりあえず疲れたし寝るから」
舞「おやすみー」
真弓「はいはい、ゆっくりね」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」