フラグ
3st.flag~第三のフラグ
入学から1ヶ月くらい
昼休み、まだそれほど仲がいい友達もいないし1クラス50人いるので狭苦しいのと騒がし過ぎるので、弁当箱を持って屋上に行った。
結構人がいたけど教室で食べるよりはよっぽどよさそうだ。
屋上のフェンス際、一段高くなっている所に座ってパンを食べてる女子を見つけた。
髪は肩くらいの長さでやたら艶々している、黙ってると怒ってるように見える顔と、黒ぶちでプラスチック製の大きい眼鏡が印象的だった。
(あれ確かおんなじクラスの女子やな)
ずっと遠くの空を見ながらパンを食べている。
その女子の横に座り弁当箱を置いて話しかけた。
「おんなじクラスやんな?名前なんやったっけ?俺、川上。」
「私?田中・・・」
こっちを見て言ったが、またすぐに遠くの空を見だした。
とりあえず弁当を開けて弁当を食べだした。
田中を見ながら食べてたが田中の見てる物にも気になって同じ方向を見てみた。
特別何かが見える物はなく空以外は何もなかった。
「田中?」
「なに?」
「さっきから何見てるん?」
「別に何を見てるわけでもないけど・・・」
「でもずっとおんなじ所見てるやん?」
「見てるけど、あっち向いてるだけで特に何見てるわけでもないから・・・」
「あぁそう言う事か!あははっ」
「川上君変わってるね」
田中は、いつの間にかパンを全部食べ終わっていた。
「田中の方が変わってるやろ?」
「え?どこが?」
「ここで1人でパン食べてる所とか」
「私が、ここにいいひんかったら川上君もここで1人でお弁当食べたんちゃうの?」
「おぉ!?ほんまやな!あはははは!一緒やな」
「ウフフフフ、やっぱり川上君は変わってるわ」
「そうか?どこが変なん?」
「私に話しかけて来る所」
「それのどこが変やねん?」
「私な、黙ってたら怒ってるみたいに見えるって良く言われるねん」
「でもほんまは怒ってんねやろ?」
「怒ってへんよ!」
「あははははっ!」
「ウフフフフフフ、だからあんまり話しかけられへんし私、話すの苦手やしいつも1人でボーっとしてる」
「でも普通に話し出来てるやん?」
「それは川上君が話すの上手いから?かな」
「よし!話す修行しよ!」
「修行ってなんか怖い、なにするん?」
「怖ないって、俺と喋ってたらそのうち話せるようになるって」
「うん、まぁいいけど・・・」
「いつもここで食べてるん?」
「うん」
「ほんじゃ今日は休み時間終わるしまた明日やな」
「うん、わかった」
それからは毎日屋上で田中と話しながら食べた。
一つ分かったのは、見た目の怒ってるように見えるとは違って大人しいって事だった。
それから昼休みはだいたいが屋上で弁当を食べた。
田中と色んな事を話した。
田中の両親は離婚して母親に引き取られたが、母親が再婚したらしかった。
再婚した義父と母親の間に子供が出来た事で義父が田中に対する態度が変わってきてギクシャクしてるらしかった。
後は学校の話しがほとんどだったが話題には困らなかった。
夏、本番前の6月
俺は中学では部活に入らなかった。
というのも経済的な事と、舞の為に少しでも早く帰ってあげたかったからだ。
学校が終わっていつものようにゴロゴロしながらテレビを観てたら健太がやって来た。
自転車でどこかに行くらしく一緒に行かないか?という事だった。
舞に少し出かけて来ると言って外に行くと『花井武志(はないたけし)』もいた。
花井の見た目はぽっちゃりと小太りの中間くらいでツルっとして薄い顔短くも長くもない髪で特徴がないが
、何でも作る事が好きらしい。
健太と同じクラスでガンダムの話しで意気投合したらしい。
この花井も健太同様、俺に
とっては今後悪友と言う名の親友となる。
花井の自転車を良く見ると変わった自転車に乗っていた。
俺「花井すごい変わった自転車に乗ってるな!こんな自転車見たことないわ」
花井「自分で部品拾い集めて作ってん」
健太「めっちゃカッコいいやろ!?この自転車!」
花井「ほんで健太も自転車作りたいって言うから部品拾いに行くねん」
俺「へぇええなー俺も作りたいな」
花井「いっぺんに2台はしんどいから、健太のが出来たら川上の作ろう」
俺「ほんまに!?よっしゃ!ほな健太のはよ作ってしまお」
俄然やる気になって部品調達に行く事になった。
ところが部品調達が一筋縄にはいかなかった、スクラップ工場や自転車屋を回り自転車で自転車の部品を持てる量は限られてるので部品調達に恐ろしく時間がかかった。
結局、健太の自転車が完成するのは夏休み前になった。
連続で作るのはしんどいから俺の自転車は夏休み入ってから一気に作ろうって事になった。
家に帰ったら夜になってて、佐知子がご飯を作っていた。
相変わらずキッチンに身長が足りないが舞も教えてもらいながら手伝っている。
俺「ただいまー」
舞「お兄ちゃんおかえりー」
佐知子「あっおかえり、早く手伝えーあはは」
俺「おぅ、あー何したらええ?」
佐知子「3人分ご飯ついで、ここにあるお皿並べといて」
俺「あぃよー」
この日のメニューは酢豚で佐知子の得意料理の一つだ。
俺「あっ旨い!」
舞「さっちゃん美味しー!」
佐知子「そう?良かったぁーあはは」
舞も大絶賛の酢豚はみんなペロッと平らげ、後片付けをパパっとして冷凍庫からアイスを取り「佐知子アイス食う?」っと聞いた。
佐知子「あー!食べるー!」
舞「舞も食べるー!」
俺「舞は聞かなくても食べるの知ってるから、はい舞の分」
舞「ありがとーお兄ちゃん」
佐知子「サンキュー♪」
それから佐知子を家に送って家に帰って風呂に入り寝る、これが中学時代の日常になった。
夏休み
花井と健太と俺で本格的に自転車の製作にかかった。
やっぱり部品調達に時間がかかった。
この花井が作る自転車は、マウンテンバイクのフレームを使い後輪タイヤにバイク用の太いタイヤを付けてギアチェンジまで付けるという物だ。
通称「花チャリ」
太いバイク用タイヤを後輪タイヤに付ける為にフレームも加工しながら作らないといけない。
花井「完成!」
俺「やったぁー!」
健太「これで3台揃ったな」
花井「ほなこれで明日サイクリング行こうや」
俺「ええな!それ!」
健太「行くぞ!ジィィィーーーク!ジオン!! 」
こうして夏休みの大半を注ぎ込んで自転車は完成した。
翌日
バイク用の太いタイヤを後輪に付けた3台の自転車は隣市まで行って帰って来た。
凄く楽しくて太いバイクのタイヤが重いなんて全然気にならなかった。
この自転車製作で「隆」「健太」「花」と呼び合うようになる。
その後自転車で遊び過ぎた3人は夏休みが残り1週間を切り宿題を必死にやる羽目になったのは言うまでもない。
2学期に入り、授業、昼休みは屋上で田中と話しながら弁当、夜は佐知子がご飯を作りに来てくれて何事もなく時は過ぎて行った。
3学期も残りわずかになった頃。
昼休みに入り屋上に行って田中と昼ごはんを食べてた。
田中「もうすぐ春休みやね」
俺「そやな、それ終わったら中2やな」
田中「春休み何するん?」
俺「別に何も予定はないけど、1組の花と健太と8組の佐知子の誰かが家にいる状態やろな」
田中「花井君と中嶋君と明神さんって楽しそうな人達やね」
俺「ほな田中も来たらええやん?話す修行にもなるで、あははっ」
田中「わ、私はええわ、妹の面倒もみてなあかんし・・・」
俺「俺も妹いるし、連れて来たらええやん」
田中「ええんかな?うーん」
俺「何、悩んでんねんな?しゅぎょーや修行!あははっ」
田中「うん、邪魔ちゃうかな?って」
俺「邪魔ちゃうよーはい決定!」
1986年3月
13才
うちの中学校は俺が行っていた小学校と隣町の小学校とが通う事になっている。
もちろん、花と田中は隣町の小学校出身だ。
とはいっても家はそんなに遠い訳ではなく中学校を挟んですぐ向こうだ。
だから春休みに入って初日に中学校で待ち合わせをした。
「オース!田中」
「川上君おはよう」
「ほら茜、ちゃんと挨拶」
田中は妹の「茜」を連れて来た、髪は長めで姉譲りの艶々した髪質だか顔は似てないが可愛い感じだ。
俺「茜ちゃんて言うの?何歳?」
俺は顔が怖いとよく言われるので出来るだけ笑顔で優しく聞いてみた。
茜「うん茜、6才」
俺「ほんじゃもうすぐ一年生?」
田中「うん、そうもうすぐ一年生になるんよね?」
茜「うん」
俺の家に向かいながら茜の話しをしていた。
茜はピアノを習っているとか、自転車にまだ乗れないとかそんな話しをした。
家に着いて俺が「上がって」っていうと礼儀正しく「おじゃまします」って言って靴を揃えた。
同年代でそんな事する人を初めて見て感心した。
家のリビングに案内してソファーに座ってもらったら舞が2階から降りて来て佐知子以外の女子の訪問者にびっくりしていた。
田中「おじゃましてます。田中美幸って言います、妹さんですか?」
その言葉使いに舞は固まっていた、日頃見ている俺の回りの人間は佐知子、健太、花、だから無理もない。
舞「えっと、兄の妹の舞です」
田中「ほら茜、挨拶」
茜「田中茜です。6才です。」
俺「凄い丁寧語やな、あははっ、とりあえず何か飲み物でも持って来るわ。ジュースでいい?」
田中「あっ、うん、ありがとう」
ジュースを取りに冷蔵庫に行くと舞が後ろから小言で「お兄ちゃん、あれ誰?」
「おんなじクラスの友達」
「ふーん、舞がジュース持って行くからお兄ちゃん向こうで待ってて」
舞が気を使ってくれたみたいだ。
舞がジュースを持って来たらちゃんとお礼を言う田中姉妹、さてこれからどうしよっか?って話しになって「人生ゲームでもする」って言ったら、そうしようって事になった。
舞は遠慮して2階に行こうとしたが四人でするぞって言って一緒
にする事になった。
なんだかんだで舞は茜ちゃんを気づかいながらも楽しんでいた。
田中「こういうゲームって初めてするけど面白いね」
俺「やろ?ちょっと休憩してもう一回しよ」
茜「やりたーい!」
舞「次は絶対に医者になる!」
舞も茜ちゃんも結構早く打ち解けた。
舞「お兄ちゃん、そういえばもうすぐさっちゃん来るよ」
俺「もう昼?」
田中「じゃあ私達そろそろ帰るね」
俺「え?何で?もう帰るん?」
茜「嫌だ、まだ帰らへん!さっきのゲームまだしたいもん!」
舞「さっちゃんのご飯みんなで食べて次は、さっちゃんも入れて一緒にしよう?」
田中「うーん、ご飯まで悪いし・・・」
俺「遠慮せんでええよ。ご飯食べてゆっくり遊んだらええやん」
遠慮する田中を3人でやや強引だか引き止め、それからすぐに佐知子は来た。
佐知子は家に入って来て「おまたー!」とリビングにやって来て、「あっ!田中さんだっけ?こんにちはー」と田中に言った。
田中「明神さん、こんにちは」
佐知子「その子田中さんの妹さん?」
田中「うん、妹の茜。ほら茜、挨拶は」
佐知子「ええよええよ挨拶なんか、みんなええなー妹いるし」
舞「舞が、さっちゃんの妹になったげようか?エヘヘ」
俺「そんな事したら俺と佐知子も兄弟になるやん!」
佐知子「別にならんでええやん、舞だけウチ貰うしーあははっ」
みんな俺を見て笑ってた。