フラグ


「そういえば、最近「佐知子ちゃん」「美幸ちゃん」ってなってて、ちょっとびっくりやわ俺、あははっ」

「ウフフ、佐知子ちゃんが「佐知子」って呼んでって言って来たんやけど私「佐知子ちゃん」としかまだ呼べへんねん。「ほんならウチも、ちゃんが無くなるまで美幸ちゃんって呼ぼう」って言われてん」

「あははっ佐知子らしいな、でも思いきって「佐知子」って呼んでみ、佐知子喜ぶで全体」

「んー・・・なんか馴れ馴れしくないかな?」

「そんな事ないって、あっ!そうや!今から練習しよ!「佐知子」って呼ぶ練習!あははっ」

「えぇー!ただ名前呼ぶだけの練習って変やん」

「ほんなら、田中から見た佐知子はどんな人?ちゃんを取って答えなさい。あははっ」

「さ、佐知子は、いつも元気で明るくて・・・ちょっと恥ずかしいんやけど」


田中は顔が真っ赤になって恥ずかしがっている。

「あははっ!これちょっと面白い!」

「ちょっと川上君!ウフフフフ」

「ほな次は、佐知子の嫌なところはどこ?」

「佐知子の嫌なところなんかない、というか私は佐知子みたいになりたいもん」

「えぇ?そうなん?」

「私なんか、いつも元気ないし暗いし口下手やし自分で嫌になるもん」

「そんな事ないやろ、田中には田中のええとこあるしやん」

「わ、私のいい所ってどこ?」

「大人しいし、回りの人に気配りが出来て思いやりがあるとこ、それは佐知子にはない!あははっ」


田中は、下を向いて「そ、そんな事ない・・・」小さな声で言った。

「このメンバーはな、みんな性格とかバラバラやけどええ奴ばっかや」

田中は顔を上げて「うん、私もそれは思う。ほんまに性格はバラバラやんね、ウフフ」

「こういうのが個性が強いって言うんかな?」

「そうやろね。でも舞ちゃんは、ちょっと佐知子に似てる所あるんちゃう?」

「やろ?舞はな佐知子に憧れてるんやって、ほんでしょーもないとこ真似しとんねん、あはははっ」


俺の右側から「何がしょーもないって?」と声がした。


田中の目が大きく見開かれ、俺がギョっとして右側を見ると佐知子がニコニコしながら「二人で何話してんの?」と言ってきた。

「びっくりするやろ!アホ!」

「あはははは!そらびっくりさせたろ思ったんやもん」

舞も佐知子の後ろから「あはははっ!お兄ちゃんの今の顔面白かった!」

「やかましいわ」

佐知子「ほんで何話してたん?」

俺「田中が佐知子に「ちゃん」を取って「佐知子」って呼ぶ練習しとったんや」

田中「ちょ、ちょっと川上君!」

俺「あははははっ!」

佐知子「ほんで練習の成果は?」


俺は手を開いて田中の方に向けて「田中、はい!どーぞ」って言った。

田中「ちょっとー!そんな事言われて言えるわけないやん!」

佐知子「そりゃそうやんね。あはは」

舞「さっちゃんが、美幸ちゃんやなくて美幸って呼んでたら、そのうち「佐知子」って呼ぶようになるんちゃう?」

俺「舞、それええ考えやん!佐知子からそう呼んだらええやん」

佐知子「それでもいいけど、ウチだけやったら変かな?って思ってんけど、そうしよっかな♪」

田中「うん、その方が早く呼べるようになるかも」

佐知子「よし!美幸、プール行こ」

田中「ちょっと待って・・さ佐知子、茜は?」

俺「あははっ!」

舞「あはは」

佐知子「あははは「さ佐知子って」、茜ちゃんやったら大丈夫やで中嶋と花井が茜ちゃんの浮き輪回して遊んでたし」

田中「もう!笑わんとってよ!じゃあ茜も心配やしプール行こっか」


みんなで流れるプールに行ってみると、健太と花が本当に茜ちゃんの浮き輪を回して遊んでた。


茜ちゃんも、凄く楽しそうに回ってる。


田中と舞も浮き輪に入っていたので、とりあえず舞の浮き輪を茜ちゃんの浮き輪みたいに回してみた。


舞は「うわぁ!」って最初言っていたが舞も楽しそうだ、次は田中の浮き輪を回してみた。

田中「えぇ!?ちょちょっと川上くぅーん!」


やっぱり田中のリアクションに俺はハマッた。

俺「あははっ!面白いやろ?」

佐知子「あぁー!ウチも回す!」

田中「ちょっと待って!ちょっと!川上君!佐知子ぉー!」


みんな大笑いだった。

田中「ちょっとー!もう!」

佐知子「美幸、面白かった?」

田中「急に回すんやもん!言ってからしてよ」


膨れてる田中が、妙に子供っぽくて可愛かった。


佐知子と田中の名前で呼び合うのも、この日から普通に呼び合うようになった。


夕方になる前に、プールから上がりみんなで帰る事にした。


帰りの電車の中でも、みんなで賑やかで楽しかった。


もう少ししたら、近所の夏祭りもある。


もう夏祭りの話題になっていた。


夢中で話していると、電車に乗ってる時間もあっという間に過ぎて駅に着いた。


駅から少し行くと田中姉妹と別方向なので別れて俺の家の前で、健太と花は帰って行った。


家に着いて毎日恒例の佐知子の晩御飯、舞と俺も手伝って手早く済ませた。


3人で晩御飯を食べてる時の会話も、今日のプールの話題と夏祭りの話題で持ちきりだった。


晩御飯が終わり、後片付けも終わって佐知子は帰って行った。


そのあと舞と俺で順番に風呂に入ってすぐ布団に入った。


翌日、起きてからも布団の中でボーっとしていたら佐知子が俺の部屋に入って来て、布団でゴロゴロしてる俺の上に乗りかかってきた。

「おはよう♪隆ちゃん!」

「うぉ!なんや佐知子!」

「いつまでゴロゴロしてんの?」

「ええやろ、たまには。ほんで重い!」

「重いって失礼やな!」

「体重全部乗せたら、誰でも重いわ!」

「それより隆ちゃん、今日何すんの?」

佐知子は両腕で俺を跨ぐ格好で体を上げた。


Tシャツの襟から佐知子の胸の谷間が見える。


思春期の男子には、刺激がキツイ。

「ん?今日?別に何にもする予定ないけど、何?」

「別にウチも何にも予定ないし、暇やなぁと思って聞いてみただけ、何かしよう?」


俺は、ちょっとドキっとした。

「何かって何するんや?」

「んー…何か考えてよ」

「ちゅうか、今日は俺ボーっとしようと思っててんけどな」

「えぇ!?」

「えぇって言われてもやな・・・そうや!佐知子、舞と遊んでこい」

「舞、どっか行ったで」

「えっ・・・ほんまか?」

「うん、昼ご飯食べてすぐ出て行った」

「えっ?もう昼か?」

「うん、もう昼やで、そやしはよ起きろぉ!」

「起きるかどうかはおいといて、早く俺の上から下りろ!」


佐知子は、俺の上から下りてベッドの縁に座った。

「ほら、下りたから隆ちゃん何かしよ」

「いや、だから何かってお前・・・」

「よし!ほんじゃあ今から隆ちゃんの部屋にスケベな本があるか探そう!」

「待て!アホ!」

「ええぇ!あるの?」

「ないない!ないから待て!」

「怪しー!」

「怪しくない!」

「布団の下とか?」


佐知子は布団とマットレスの間に手を入れ出した。

「コラー!なんやねん佐知子」

「あははは、隆ちゃん可愛い♪」

「やかましい!」

「今日のところは、これくらいにしといてやろう貴隆君、あははは」

「何様やねん?ほんま、とりあえず着替えるから佐知子出てくれ」

「ん?やっとやる気になったん?」

「やる気には、なってへんけどな」

「えーと、スケベな本は・・」

「やめろ!」

「あははは、じゃあ先に下行ってる」

「はいはい」

俺は、着替えて下の居間に行ったら昼ご飯の用意がしてあった。

「おっ!今日はカレーか?いつもありがとうな佐知子」

「ん?あはは、いいよ気にせんで、カレー大量に作っといたから当分カレー食べといてな」

「ああ、わかった」

「明日1日部活があるから来れないし」

「1日部活ある日もあるんか?」

「うん、明日は朝練とちょっとした試合があるから」

「へぇ、そうなんや」


昼ご飯を食べて、やっぱり今日何する?って話しになった。


「ねぇ隆ちゃん、とりあえずどっか行かない?」

「とりあえずどっかって、どこ行くねん?」

「んー…」

「ほなパンジョでもブラブラしに行くか?」

「あぁー!行く行く!」


パンジョと言うのは、佐知子、舞、田中姉妹と水着を買いに行ったショッピング街で、他にも色んなところがある。


ショッピングは勿論のこと、スイミングスクール等の各種スクール、ちょっとしたホール等、とにかく見て歩いてるだけで時間潰しが出来る。

「佐知子、ほんで舞どこ行ったか知らんの?」

「うん、何にも聞いてへんな」

「ふーん、珍しいな。いつ帰って来るんやろ?」

「たまには二人もええやん、デートみたいで」

「で、デートってお前」

「なになに?隆ちゃん照れてんの?」

「は?なんで照れんねん今さら、ほなさっさと行くぞ」


家を出て駅まで歩いて行く。

「ほんでさっきの、今さらって何?」

「ん?あぁ、一緒に風呂入った仲やのにって事」

「そんなん子供の頃やん!」

「でも俺は、佐知子の全裸を見たことあるで、あははっ」

「スケベ!エロ!変態!」

「お前は今そいつと二人で歩いてるんやけどな」

「ウチ家に帰ろうかな?」

「ええなそれ!家でゴロゴロ出来るし」

「ちょっと止めてぇや!」

「あはははっ、ほんまは俺、家でゴロゴロするハズやったんや」

「そんなん知りませーん!あはは」


お互いそんな事を言いながら、電車に乗ってパンジョに着いた。


とにかくブラブラ見て歩いた、たまに佐知子が「ちょっとあれ見て!」とか「これ可愛い!」とか言うたびに止まって見た。


色んなフロアを下から見て歩いてたら6Fまで来て果物を使ったデザート店が目に止まって「佐知子、チョコバナナ食わへん?」って言った。

佐知子は「食べる食べる!買って隆ちゃん」と言って来た。


俺は、チョコバナナを2つ買ってテーブルにいる佐知子に持って行って二人で座って食べた。

「隆ちゃん!ありがとう」

「ええよこれくらい、いつも兄妹お世話になってるからな」

「あぁ、ご飯の事?」

「そう、助かるわ」

「花嫁修業やしええよ、あはは」

「花嫁になれるかどうかは知らんけどな」

「しばく!もしそうなったら、隆ちゃんに貰ってもらうから」

「えぇ!?」

「なんでそんな嫌がんねん!?」

「あはははっ!」



俺は正直、あの3才の頃のよく見る夢の約束を、この時は守るつもりでいた。


「隆ちゃんのおかずだけ、辛くしようかな!」

「ちょ、ちょっと待て!チョコバナナで許してくれ!頼むから」

「どうしようーっかなー?」

「よし!チョコバナナもう1本買って来たるから!」

「そんなん何本もいらんわ!あはは」

「あはははっ」


舞も心配だから、チョコバナナを食べ終わって早めに帰る事にした。


家に帰ったら舞は家にいた。

舞「おかえりー」

佐知子「ただいまー!」

俺「舞、帰ってるやん、どこ行ってたんや?」

舞「一緒のクラスの子の家に、夏休みの宿題しに行っててん。そういう二人はどこ行ってたん?」

佐知子「隆ちゃんとデート行っててん!」

俺「パンジョブラブラしに行っただけやろが」

舞「へぇーお兄ちゃんデートして来たんや!」

俺「ちゃう!パンジョや言うたやろ!」

佐知子「ほんでな舞!隆ちゃんにウチ花嫁になって貰ってもらうねん!あはは」

俺「俺なんも言うてへんやろ!」

舞「お兄ちゃん良かったやん!さっちゃん可愛いし」

俺「何が良かったやねん・・」

舞「そんなん言うてたら、さっちゃんにフラレるでぇー!お兄ちゃんが、さっちゃんにフラレたら舞がお兄ちゃん貰ったげよか?あはは」

俺「なんやねん?お前らは」

佐知子「うわー!隆ちゃんモテモテやん!あはははは」


この日は、こんな調子で晩御飯を食べた。
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