*約束期限*
「これが俺の」
*真衣side*
運ばれた病院で、すぐに手術が始まった。
病院の廊下に涼介と二人、終わるのを待つ。
始まったのが5時半頃。
今は、8時を指している。
「涼介は、知ってたの?」
椅子に座るあたしの、向かい側に立つ涼介に問いかける。
背けていた顔をあたしに向ける。
「知ってたところで止められねーよ」
言葉のトーンとは真逆に、表情はとても柔らかかった。
「…てか、止め切れなかった」
「涼介…」
「あいつは本気だ」
お医者さんに聞いた。
手術をせずに、退院まで体力を回復させた。
けどそれは一時的なもので、サッカーなんてもってのほか――
「それで俺は、本気でアイツに憧れてた」
思いもよらない言葉に、目を見開く。
全く正反対で、桜庭くんのこと嫌いだと思ってたのに。
「真衣、覚えてないと思うけどさ…」
少し微笑みながら話し出す、初めて会った時のこと。
あの時の相手が桜庭くんだったなんて、全く知らなかった。
「すっげー嫌いだけどな。それとこれとは別だ」
「うん」
「いつか、アイツと同等になりたい。だから――」
手術中のランプを見つめた。
あたしは、その横顔から目を離さない。
「死ぬとか許さねー」
うん。
声にならなかった声を、あたしは落とした。