*約束期限*
*真衣side*
時計の長い針が一周して、9時。
桜庭くんのご両親は仕事で出張に出ていて、今日は来れないらしい。
張りつめる重たい空気が、不安を掻き立てる。
「涼介…?」
「ん?」
「もし、桜庭くんが――」
震える言葉を、手術ランプの消える音が止めた。
二人でパッとドアを見つめる。
中から、医者が出てきた。
「先生っ…」
駆け寄ると、先生はにこりと笑った。
その様子に、ほっと息をつく。
「―-だけど、意識は戻ってない。危険な状態です」
「え…」
「もしかしたら、このまま意識が戻らずに――」
――ドクンッ
心臓の音が大きく聞こえた。
戻らずに…?
桜庭くんは…?
真衣、と涼介に声をかけられてハッとする。
「でも、目を覚ます可能性もあるんですよね?」
「それはもちろん」
可能性。
それがどれほどなのか、全くわからない。
「今日は会えないから、もう帰りなさい」
先生はそう言って、あたしたちを帰した。