*約束期限*

*真衣side*



問いかけてから桜庭くんはずっと黙ったままだった。

妙な沈黙が流れて、不安が駆り立てられる。


「桜庭くん…?」

「ーー俺は」


一瞬、とても辛い表情にみえた。

胸がぎゅっとなる。ついうつ向いてしまう。


「…うん、どこもいかない」


だけどまた急に優しい声になって、その目はあたしを見つめる。

桜庭くん…


「ほらー、またそんな顔する」


ぽんぽんとあたしを撫でてくれる手は震えていた。


そんな顔してるの、どっちよ…



「桜庭くん、隠してることあるならはっきり言ってよ?
 一人で抱え込まないで…」

「楠木…」


泣かないようにぐっと堪えていると、不意に桜庭くんの笑い声がもれた。

驚いて顔をあげる。


「そうだよな。こういうことこそ、楠木には伝えるべきだったよな





 俺、もういつ死ぬかわかんないんだ」



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