*約束期限*

*真衣side*


旅立った?

桜庭くんが?


頭が軽いパニックを起こす。


「それって、どういうことですか」


涼介が焦ったように聞く。


「そのままの意味よ?昨日ね。本当に急だったわ」

「えっ…。じゃあいま、瞬はどこに?」


涼介のいう「瞬」というのは、きっともうこの世に存在するものではない。


「お父さんがアメリカにいるらしくて、それでそっちに」


そこで看護師さんのナースコールがなり、受付が他の人に変わる。





桜庭くんが、この世から



いなくなった…?





動けないあたしを涼介が支えて、病院のそとに出る。

近くにあったベンチに腰かける。


「真衣、大丈夫か…?」


涼介の手があたしの頭に触れた瞬間、涙が込み上げてきた。


「うっ…なんで、なんで…」


もうどこにも行かないって言ったのに。

死なせない、って決めたのに。

どうして


「なにもしてやれなくて、ごめんな」


あの日の体育祭のように、優しく抱き締めてくれた。

その瞬間、また涙がこぼれだす。





桜庭くんは、もうこの世にはいない。


こうやって抱き締めてくれることも


手を繋ぐこともできない。




…もう、いないんだ。




< 115 / 124 >

この作品をシェア

pagetop