*約束期限*

*瞬side*


俺が声をかけるより先に、涼介が気がついた。

あいつは絶句し、買ったばかりだと思われる携帯をその場に落とした。

『瞬...お前なんで...』

涼介とは、俺の契約が済んでから近くの公園で話した。



『...そっか、手術だったのか』

『慌ただしくて説明もしないで消えてごめん』

『俺ら、お前が死んだかと思ってた』


涼介の言う、「俺ら」が耳についた。


『楠木...大丈夫だったか?』

『そーだお前、俺なんかより先に真衣に会うべきだろ』

『...これから行こうと思う』

『あいつ、多分すごい動揺する。そんで泣く。
お前がいなかったこの2年、本当に真衣がふらふらしてた』

『ああ...』

『まじであいつのこと見てらんなくて...んーまあ色々あったな』


あえて言わない『色々』がとても気になる。

...気になるけど、しょうがない。

もうどうせ月日は戻らないのだ。


日が暮れ始め、涼介との話も落ち着いて。

俺は楠木のところへ向かおうとした。


『多分、今日は近くの海岸にいると思う』


その言葉で、思い当たる節があった。


『さんきゅ、じゃーな』


一刻も早く、という気持ちが急いて足を早くするーー


『ーー瞬っ!』


普段あまり聞かない涼介の大声に、はっと振り返る。


『今度真衣を離したら、次は絶対

ーー俺が奪うから』


俺をまっすぐ捉えるその瞳を、負けじと見つめ返す。


『当たり前だろ?そんなことさせねーよ』


満足そうに涼介が笑ったのを見て、俺はまた走り出す。

2年間想い続けた、あの子の元へーー。


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