*約束期限*

*真衣side*



作ったものを次々にラッピングしている時。

『ぷるるる…』

とケータイが鳴った。

液晶画面には、「桜庭瞬」の文字。

あたしは急いでケータイを取った。


「も、もしもしっ!」

『もしもし…楠木?』

「うん、だよ」


わざわざ聞き返してきたその声には、元気がなかった。


『メール、見たよ。…ごめん、明日行けないわ』

「え…?」

『…しばらく、行けない。連絡も取れそうにない』


冷たく重い沈黙が流れる。

どうしたの?と声をかけようとしたけど、


『まあ、大したことないしな!先生が大袈裟なんだよ~』


明らかにわざとだとわかる明るい声に断ち切られた。

…絶対、大丈夫じゃないよね

あたしは返す言葉が見つからなかった。


『ってことで。大丈夫だから心配すんなよっ』

「桜庭くん…」

『チョコ、今度作って』


”今度”

あるのかな…なんて変な想像をしてしまう。


『――桜庭くん、今度の手術の…』

『じゃあ、またね』


と言って切られてしまった。

っていうか、今奥で『手術』って…





「…桜庭くん…」


どんどん離れていっちゃうみたいで嫌だ。



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