*約束期限*

*真衣side*



桜庭くんの口から聞くと、本当なんだって胸が苦しくなる。

あたしは下を向いた。


「…楠木、聞いて?」


桜庭くんの手が、優しく頬に触れる。

涙がこぼれそうになる。


「いつかね、こんな時が来るってわかってた。サッカーだって、体に無理してやってたし。
ちっちゃい時から決まってたんだよな」

「うん…」

「どんどん体悪くなってくし、最近頭痛もひどくてさ」


あたし、全然気づいてなかった。

情けない…


「これから、手足とかも動かなくなってくんだって。どんどん俺のじゃなくなってくの」


ずっと明るい調子だった口調に曇りが見えて、顔を上げようとした――

途端、ぎゅっと抱きしめられた。


「情けねーよな、わかってたことなのに…」


声をかけようとして、やめた。

…泣いてる。

桜庭くんが、泣いてる。


「手術は…受けるんだよね?」

「…受けても、変わらないって。良くなる可能性も低いって」

「そんな」


腕の力が強くなるのを感じた。

あとに続く言葉が浮かばない。




…治らない、病気

悪くなってくのに、なにもできないなんて――





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