*約束期限*

*涼介side*


部活を休み、昨日真衣に教えてもらった病院に行く。

『中央病院』という看板に、白く無駄に大きい気がする建物がそびえ立つ。


桜庭瞬と書かれた部屋を、コンコンとノックする。

「はーい」と中から返事が聞こえそっと開ける。


「…よう」

「涼介?」


きょとんとした表情を見せたが、すぐににやりと笑った。


「ほんと、みんなして口軽いなー」

「…お前、大丈夫なのか?」


そばにあった椅子に腰かける。

俺の知ってる瞬はグラウンドにいるから、ベッドの上にいるのは似合わない。


「んーまあ。治るよ」

「春の高校サッカー、出れるんだろうな?」


あの部活のエース。

そんな奴が抜けたら、どうなるか。

俺はじっと瞬を見つめる。

口元に笑みを浮かべたまま、しばらく一点を見つめていた。


「…出るつもり。ってか、出ます」


俺の顔は見ずに言った。

きっとそれは、彼なりの意味がある。

なんとなく、伝わった。

瞬は――


「真衣泣かしたら、許さねーからな」


にこっと爽やかに笑った。

場所が変わっても、この笑顔はあの時から変わらない。



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