*約束期限*

*真衣side*


桜庭くんが入ってから、さっきまでのチームとは思えないように流れは変わった。

やっぱり、エースのいる安定感は違う。

桜庭くんもしばらくしていなかったはずなのに、全く衰えていない。


後半9分で2点取り、そして12分で差を3点縮めた。

あとまだ30分もある。

もしかしたら、もしかしたら――


「ピピ―ッ!」


ホイッスルが大きく鳴り、何事かと目を凝らす。

すると、こちら側のユニフォームを着た選手がうずくまっていた。


「あれ…響くん!?」

「だれ?」

「桜庭くんの幼馴染って感じの人!」


すぐに担架がやってきて、それで運ばれる。

相手チームが故意に行ったこととして、フリーキックがされることに。

蹴るのは、桜庭くん。


響くんが倒れた場所から慎重にボールを蹴った。

蹴ったそれは一ミリのぶれなく、弧を描いてゴールに吸い込まれていった。


「やったー!」


応援席からも歓声がわっと上がった。

みんなに頭をなでられる桜庭くん。

…うん、元気そう。


完治したかと思い、心配が吹き飛んだのは


――後半18分。




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