約束
五話
急速に落ちていく。くるくると回転しながら。手を動かして、何かを掴もうとするけど掴むことはできない。時々小さな星が体に当たって砕け散る。
宇宙なのに落下してる。
どこかぼんやりとした意識で思う。宇宙を突き抜けると、見慣れた塔を視界が捉えた。
「危ないよ」
優しい感触と太陽の匂い。落下は止まり、暖かい闇に包まれうつらうつらとする。
「存在を半分置いてきたんだね」
低くて甘い、彼の声が響く。水中を漂う意識が忘れかけていた記憶を映し出した。
――歌って。子守歌を歌って。
どうしても聞きたくて必死に口を動かす。
「子守歌、聞きたい」
「懐かしいことを言うね。じゃあ塔に行こうか」
頷くと、風の流れを感じた。目がなかなか開かないけどすぐに着くのは分かってる。いつも近くにあるもの。
『だってそこは、私の生まれた場所だから。』
……私の、うまれたばしょ?
何かおかしなことを思った気がする。なんでそんなことを思ったのだろう。
「着いたよ」
彼の声で意識が浮上した。輪郭を無くした私が「私」になって、確かな鼓動を刻む。
「ありがとう」
目を開けると、塔の最上階にちょうど入るところだった。
そこは、部屋と言うよりは開け放たれた空間。壁は無く石柱が等間隔に立ち並ぶのみ。石の硬質な部屋の真ん中に白く大きな繭がある。
アンバランスなこの空間が好きなのだ。
堅牢な石で出来ているくせに開放的。開放的なくせに守るべき繭がある。もちろんこの繭は空っぽだけど。
「昔はよくここで歌ったね」
繭の上に私をおろしながら彼は呟いた。
そう。昔はよく歌をせがんだ。何かに祈るように、不安を消すように、あの歌を。
「そうだね……。あの頃のように安らぎをちょうだい」
宇宙なのに落下してる。
どこかぼんやりとした意識で思う。宇宙を突き抜けると、見慣れた塔を視界が捉えた。
「危ないよ」
優しい感触と太陽の匂い。落下は止まり、暖かい闇に包まれうつらうつらとする。
「存在を半分置いてきたんだね」
低くて甘い、彼の声が響く。水中を漂う意識が忘れかけていた記憶を映し出した。
――歌って。子守歌を歌って。
どうしても聞きたくて必死に口を動かす。
「子守歌、聞きたい」
「懐かしいことを言うね。じゃあ塔に行こうか」
頷くと、風の流れを感じた。目がなかなか開かないけどすぐに着くのは分かってる。いつも近くにあるもの。
『だってそこは、私の生まれた場所だから。』
……私の、うまれたばしょ?
何かおかしなことを思った気がする。なんでそんなことを思ったのだろう。
「着いたよ」
彼の声で意識が浮上した。輪郭を無くした私が「私」になって、確かな鼓動を刻む。
「ありがとう」
目を開けると、塔の最上階にちょうど入るところだった。
そこは、部屋と言うよりは開け放たれた空間。壁は無く石柱が等間隔に立ち並ぶのみ。石の硬質な部屋の真ん中に白く大きな繭がある。
アンバランスなこの空間が好きなのだ。
堅牢な石で出来ているくせに開放的。開放的なくせに守るべき繭がある。もちろんこの繭は空っぽだけど。
「昔はよくここで歌ったね」
繭の上に私をおろしながら彼は呟いた。
そう。昔はよく歌をせがんだ。何かに祈るように、不安を消すように、あの歌を。
「そうだね……。あの頃のように安らぎをちょうだい」