約束
私の手を握りながら、彼は歌い出した。
「赤は痛み 黒は悲鳴
地獄から逃げ出して
君はもう一つの世界を開ける
青は眠り 白は犠牲
闇と似て非なるもの
君ともう一人の宇宙を繋げ
僕も二人 君も二人
鏡から抜け出して
いつか裏表の幻となる」
懐かしい歌。低くて艶のある大好きな声。繋いだ手は冷たいのに暖かくて、彼のすべてが愛しくてたまらない。一番大切で愛しい彼。
「ねぇ、私を愛してる?」
問いかければ、真摯な眼差しが私を射抜く。
「もちろん愛してる。俺の魂は君のものだよ。俺がここに在るのは、君を愛するためだ」
そう言った彼は悲しげに微笑んだ。
「君が幸せでいられるなら何だってするよ」
壊れそうな微笑みを浮かべる彼に、胸を衝かれた。
どうしてそんな顔をするのだろう。どうしてこんなに揺さぶられるのだろう。私の幸せってなんだろう。
ここのこと、あちらのこと、彼のこと。ぐるぐると考えて、答えを出す。何を考えたってこの黒い彼がちらつくのだ。それは不思議と現実の彼ではないのだ。現実の彼には、確かに執着している。好きだとも思うけど、目の前の彼とは存在が違うのだ。
「私はあなたがそばにいて愛してくれるなら幸せ」
私がそう言うと彼は笑った。酷く危険で色気のある顔で。ぞくりと肌が粟立ち、本能が警鐘を鳴らしている。けれど、目を離せない。まるで悪魔に魅入られたように。笑顔のまま彼が口を開く。
「愛してるよ。ずっとずっと君だけを見てきた。君だけを求めてきた」
何かが、何かが違う。いつものような穏やかさがない。
怖い。
怖いのに……切ない。
この言葉は聞いたことがある。私は知っている。
起き上がって、彼を抱きしめる。
「リノヴァ。リノヴァ、あなたを愛してる」
リノヴァの手が私の頭を撫でる。
「君は思い出さなければならない。そしてすべてを知ったとき、もう一度選んでくれ」
「どういう――」
疑問を最後まで口に出せず、世界が歪んでいく。忍び寄る闇に視界が奪われ、終わりがきた。
「赤は痛み 黒は悲鳴
地獄から逃げ出して
君はもう一つの世界を開ける
青は眠り 白は犠牲
闇と似て非なるもの
君ともう一人の宇宙を繋げ
僕も二人 君も二人
鏡から抜け出して
いつか裏表の幻となる」
懐かしい歌。低くて艶のある大好きな声。繋いだ手は冷たいのに暖かくて、彼のすべてが愛しくてたまらない。一番大切で愛しい彼。
「ねぇ、私を愛してる?」
問いかければ、真摯な眼差しが私を射抜く。
「もちろん愛してる。俺の魂は君のものだよ。俺がここに在るのは、君を愛するためだ」
そう言った彼は悲しげに微笑んだ。
「君が幸せでいられるなら何だってするよ」
壊れそうな微笑みを浮かべる彼に、胸を衝かれた。
どうしてそんな顔をするのだろう。どうしてこんなに揺さぶられるのだろう。私の幸せってなんだろう。
ここのこと、あちらのこと、彼のこと。ぐるぐると考えて、答えを出す。何を考えたってこの黒い彼がちらつくのだ。それは不思議と現実の彼ではないのだ。現実の彼には、確かに執着している。好きだとも思うけど、目の前の彼とは存在が違うのだ。
「私はあなたがそばにいて愛してくれるなら幸せ」
私がそう言うと彼は笑った。酷く危険で色気のある顔で。ぞくりと肌が粟立ち、本能が警鐘を鳴らしている。けれど、目を離せない。まるで悪魔に魅入られたように。笑顔のまま彼が口を開く。
「愛してるよ。ずっとずっと君だけを見てきた。君だけを求めてきた」
何かが、何かが違う。いつものような穏やかさがない。
怖い。
怖いのに……切ない。
この言葉は聞いたことがある。私は知っている。
起き上がって、彼を抱きしめる。
「リノヴァ。リノヴァ、あなたを愛してる」
リノヴァの手が私の頭を撫でる。
「君は思い出さなければならない。そしてすべてを知ったとき、もう一度選んでくれ」
「どういう――」
疑問を最後まで口に出せず、世界が歪んでいく。忍び寄る闇に視界が奪われ、終わりがきた。