約束
『君は思い出さなければならない』
唐突にリノヴァの言葉が蘇った。彼はすべてを知っているのだろうか。何か他にヒントになることは?
あの時は二人で塔の中にいた。そして歌を聞いていたんだ。リノヴァは昔はよく歌ったと言っていた。特に違和感もなく受け止めていたが、昔とはいつのことなのだろう。それは私が思い出せない頃なのかもしれない。記憶のない幼い頃の自分が強請った?
確かに今まで歌のことなんか忘れていた。それなのに、急に聞きたくなったんだ。もう一度聞けば何か思い出せるかもしれない。
「誰か迎えに来てよ」
ぽつんと呟いても、睡魔の欠片もなくあちらへ行けそうにない。この不安を消してくれるのは、リノヴァしかいないのに。
「リノヴァ、助けて」
脳裏にリノヴァを描き、ぬくもりを思い出す。少しだけ安堵して記憶を掘り起こした。
歌の内容は確か色が出てきた。赤、黒、青、白だ。赤と黒の地獄から抜け出して、何をするんだっけ?青と白の眠りと犠牲。それは何を意味する?
『僕も二人 君も二人』
どくん、と心臓が跳ねた。嫌な予感がする。ここから先はだめ。考えちゃいけない。
『君も二人』
日付が2日空いているメール。メールの内容。
待って、そもそもなんであんなメールしてきたの?
『君も二人』
まさか――。
今度は送信メールを開く。
私、返信してない。なのに、彼に返してる。
覚えの無いメールをクリックする。
『わたしのこと追い出したくせにずいぶん楽しそうね
誕生日なの知っているくせに当てつけ?
幸せそうで羨ましいわ』
私じゃない。誰かが勝手にメールしたんだ。
他のメールもかなりの頻度でこの誰かがメールしていた。私はあまり携帯電話はいじらない。送信メールなんて見たこともなかった。こんなことになっているなんて。
「私は二人いるの……?」
この言葉を聞きつけたように、黒い蜻蛉が現れた。優雅に妖精のようにふわふわと。薄れてゆく意識の中、悪夢になりそうだとぼんやり思った。
唐突にリノヴァの言葉が蘇った。彼はすべてを知っているのだろうか。何か他にヒントになることは?
あの時は二人で塔の中にいた。そして歌を聞いていたんだ。リノヴァは昔はよく歌ったと言っていた。特に違和感もなく受け止めていたが、昔とはいつのことなのだろう。それは私が思い出せない頃なのかもしれない。記憶のない幼い頃の自分が強請った?
確かに今まで歌のことなんか忘れていた。それなのに、急に聞きたくなったんだ。もう一度聞けば何か思い出せるかもしれない。
「誰か迎えに来てよ」
ぽつんと呟いても、睡魔の欠片もなくあちらへ行けそうにない。この不安を消してくれるのは、リノヴァしかいないのに。
「リノヴァ、助けて」
脳裏にリノヴァを描き、ぬくもりを思い出す。少しだけ安堵して記憶を掘り起こした。
歌の内容は確か色が出てきた。赤、黒、青、白だ。赤と黒の地獄から抜け出して、何をするんだっけ?青と白の眠りと犠牲。それは何を意味する?
『僕も二人 君も二人』
どくん、と心臓が跳ねた。嫌な予感がする。ここから先はだめ。考えちゃいけない。
『君も二人』
日付が2日空いているメール。メールの内容。
待って、そもそもなんであんなメールしてきたの?
『君も二人』
まさか――。
今度は送信メールを開く。
私、返信してない。なのに、彼に返してる。
覚えの無いメールをクリックする。
『わたしのこと追い出したくせにずいぶん楽しそうね
誕生日なの知っているくせに当てつけ?
幸せそうで羨ましいわ』
私じゃない。誰かが勝手にメールしたんだ。
他のメールもかなりの頻度でこの誰かがメールしていた。私はあまり携帯電話はいじらない。送信メールなんて見たこともなかった。こんなことになっているなんて。
「私は二人いるの……?」
この言葉を聞きつけたように、黒い蜻蛉が現れた。優雅に妖精のようにふわふわと。薄れてゆく意識の中、悪夢になりそうだとぼんやり思った。