約束
本当の彼だったらこんな甘い言葉はくれない。だけど、この世界なら好きなように彼と過ごせる。
「今日はね、月に行きたいの。星鳥を見に」
甘えるように首に腕を回せば、お姫さま抱っこをしてくれる。
「じゃあ人魚の海に行こうか」
「うん。おじいさんに写真撮ってもらおうね」
音もなく彼の背中から大きな翼が生えた。この薄暗い森の中で、真っ黒な彼は悪魔のようだ。
「しっかりつかまっていて。君を落としたくはないからね」
言われたら通り更に密着すると、大きな翼で羽ばたいた。
彼の体に触れていると安心する。目を閉じれば彼の存在を全身で感じる。私の大好きな匂い。見た目に反して、彼からは太陽の匂いがする。
「何か嫌なことでもあったのかな?」
「どうして?」
「いつもなら、景色を見てはしゃいでいるだろう」
苦笑して目を開けると、空と海の境が見えた。紫色の空と藍色の海。
森を越えた先には海が広がっている。そこには海に沈みかけた太陽がいて、辺りを照らしている。美しい光景ではあるが、今の私には少し眩しすぎた。
彼の黒い首筋に顔をうずめて目を閉じる。
もう少し行けば、月の領域に入るだろう。
「もうすぐ、私の誕生日じゃない。だけど彼は旅行に行ったの。家族と。私の誕生日までには帰ってこれないみたい」
「……それなら、誕生日はずっと一緒にいよう。俺にお祝いさせて欲しい」
「ありがとう。大好き」
優しい彼の心に触れて、涙がこぼれる。
彼は人魚の海に着くまで、何も言わず飛び続けてくれた。
「今日はね、月に行きたいの。星鳥を見に」
甘えるように首に腕を回せば、お姫さま抱っこをしてくれる。
「じゃあ人魚の海に行こうか」
「うん。おじいさんに写真撮ってもらおうね」
音もなく彼の背中から大きな翼が生えた。この薄暗い森の中で、真っ黒な彼は悪魔のようだ。
「しっかりつかまっていて。君を落としたくはないからね」
言われたら通り更に密着すると、大きな翼で羽ばたいた。
彼の体に触れていると安心する。目を閉じれば彼の存在を全身で感じる。私の大好きな匂い。見た目に反して、彼からは太陽の匂いがする。
「何か嫌なことでもあったのかな?」
「どうして?」
「いつもなら、景色を見てはしゃいでいるだろう」
苦笑して目を開けると、空と海の境が見えた。紫色の空と藍色の海。
森を越えた先には海が広がっている。そこには海に沈みかけた太陽がいて、辺りを照らしている。美しい光景ではあるが、今の私には少し眩しすぎた。
彼の黒い首筋に顔をうずめて目を閉じる。
もう少し行けば、月の領域に入るだろう。
「もうすぐ、私の誕生日じゃない。だけど彼は旅行に行ったの。家族と。私の誕生日までには帰ってこれないみたい」
「……それなら、誕生日はずっと一緒にいよう。俺にお祝いさせて欲しい」
「ありがとう。大好き」
優しい彼の心に触れて、涙がこぼれる。
彼は人魚の海に着くまで、何も言わず飛び続けてくれた。