ご懐妊‼ 新装版
「それは、さらしだろ。毎日巻くのは大変だから、神棚にでも飾っとけ。普段使いできる簡単な物が売ってるんだ」


「でも、まだお腹も出てないですよ」


私は自分の下腹をさする。
つわりで激ヤセした時と比べると少しだけ丸くなったような気はするけど、
まだ妊婦っぽくない。

電車で席を譲られることだってない。


「いずれ、ポコンと出てくるだろ。用意して、今日もらった護符の方を縫い付けておけ」


部長は言って、どんどんメトロの入り口に歩いていく。
もう、慣れましたけどね。
部長の用意周到でまめまめしい性格。


私たちは新宿の百貨店に立ち寄り、ベビーコーナーに向かった。
妊娠して初めてやってきたこのコーナー。

白くてふわふわで、
気分が高まるなぁ~。

お腹の子に呼びかける。


「そのうち、あんたのお洋服買いに来てあげるからね」


「性別がわかったらな」


部長が冷静に口を挟んだ。
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