ご懐妊‼ 新装版
「ゆっくりさよならするようなもの。アルツハイマーを指してそういうことがある。
俺はそれを知りながらお袋と離れた。自分からはあまり連絡もせず、忙しさを理由に帰省もほとんどしなかった。

怖かったのが一番だ。俺が置き去りにした母がどんどん物がわからなくなり、しまいには俺のこともわからなくなることが。
だから全力で逃げた」


言葉にようやく感情がちらついた。
それは、圧倒的な後悔。
そして、懺悔に満ちていた。


「恐れていた日は5年ほど前にやってきた。お袋が暴れてデイサービス施設を飛び出したという連絡が来たんだ。
俺は実家に飛んで帰った。
お袋は昔暮らした寺の裏山で雨に濡れて震えていたよ。俺のことも、自分のことも、わからなくなっていた」


「部長……」

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