ご懐妊‼ 新装版
部長は明日早いのと、私たちに気を使ったようで、先に寝室に引き上げてしまった。

私と母は、お茶を飲みながらのんびりテレビを眺めていた。


「あーあ、陣痛、いつくるのかなぁ」


私はぼやく。
この数日間、陣痛らしきものは来ていない。

このタイミングなら、母にも出産の立会いをしてもらえたのに。


「そんなもんよ」


母は呑気な声だ。
私は母を横目で見る。


「ね、私を産んだ時はどうだった?」


今まで、聞いたことなかった。
母の出産の話。
一番身近な経験者の話を聞かない手はないよね。


「あんた?あんたはタイミング悪かったわよ~?」


母が苦笑いのような表情になる。


「臨月の頃さ、ちょうどおじいちゃんの具合が悪くてね。もう、半月もたないってお医者さんから言われたもんだから、死ぬ前に孫を見せなきゃって話になってさ。37週で入院したのよ。すぐに赤ん坊を出してくれーって」


「へ?そうだったの?」
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