満月~full moon~
prologue



少し肌寒い満月の夜、男は女に呼び出され、公園にあるベンチに座っていた。

呼び出した本人は、無表情のまま、男の隣に座っている。


ここに座ってから、早1時間。

呼び出したのは女なのに、何も言い出さない。

じっと黙ったままの女に、男は不安になる。


おかしいのは、今日だけではなかった。

ここ最近は、何日も逢えず、連絡も取れない状況だった。

そして、何を聴いても答えてくれない。


その間、街で偶然逢うことがあった。

だけど、逃げるように去って行った。

その時の表情にも驚いた。

普段のふんわりした笑顔も、優しい眼差しもそこにはなかった。

あったのは、別人かと思うぐらいのキツイ表情。




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