満月~full moon~
やっぱり、聴き間違いかもしれない。
こんなにたくさん人がいる中で、すぐに姿を消すことなんて出来ない。
そう思うけど、視線は感じたままだ。
亜弥の最後の言葉も気になる。
“逃げて”って、誰から逃げろというのか。
亜弥のこの言葉に、視線と共に発せられた言葉。
私の背筋が凍り付いてしまった。
震える体をなんとか抑えて、仕事に出た。
だけど、仕事に集中出来ない。
ずっと、誰かに見られているような気がする。
あの鋭い視線が、今も離れない。
いつもいる場所なのに、居心地が悪かった。
「浅見さん、顔色悪いですよ」
会社では、後輩の子に心配された。