満月~full moon~



一気に話した彼女の目には、涙が溜まっていた。

流すまいと必死でたえているけど、今にも涙が溢れそうだった。



「ごめん」



その表情を見たら、謝ることしか出来なかった。

何度も、そう呟いた。

その中で、とうとうたまっていた涙が零れた。



「君には、美佳しかいなかったんだな」


「家族は、お姉ちゃんしかいなかった」



そう言われると、心が痛む。

美佳を死なせてしまったとはいえ、まだ人の心をなくした訳ではないから。



「ちなみに、彼氏は?」



美佳の年齢を考えると、彼女も30才手前だろう。

だから、彼氏がいても不思議ではない。

そうしたら、この子は独りじゃないはずだから。




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