満月~full moon~
だけど、俺の言葉に彼女は止まった。
少し言いにくそうに俯いた。
「……彼氏は、いた。けど、この事件を起こす前に別れた。
何も知らなかったし、迷惑かけたくなかったから……」
切なそうな苦痛そうな表情。
それを見れば分かる。
彼女はまだ、彼氏のことを想っている。
嫌いで別れた訳ではないだろうから、当たり前かもしれないけど。
だったら、彼氏だって同じ想いなんじゃ……。
「あっ」
そんなことを思っていると、俺はあることを思い出した。
そうだよ、それなら辻褄が合う。
彼女同様、彼氏も想い続けていたんだ。
「急に、なに?」