満月~full moon~
俺が急に声を上げたことが気になったらしい。
彼女は、怪訝そうな顔をして俺を見る。
「何でもないよ。
ただ、彼氏は君を探しているかもしれないね」
「えっ?」
俺が言うべきことではないと思う。
だけど、少しだけ彼女の気持ちも彼氏のことも、分かる気がするから。
「中途半端な別れなら尚更、彼氏は納得いかず探していると思う」
「そんなはずないっ!」
彼女は、ムキになって否定した。
歯を食いしばって、何度も首を振っている。
今後、彼女を生かすも殺すも、彼次第なのかもしれない。
彼が目の前に現れれば、彼女は躊躇するだろうから。