満月~full moon~
「智子を殺すのはやめた方がいい。
君はこれ以上、罪を重ねちゃいけない」
「何を言っているの?
もう、あたしは戻れないのよ!?」
彼女は、キッと俺を睨みつける。
確かに、彼女の言う通りだ。
今更だと思う。
だけどなぜか、彼女には幸せになって欲しいと思った。
彼女の本心を、垣間見たせいか。
ただ、これ以上言っても彼女は素直に聴き入れることはないだろう。
だから、俺はゆっくりと彼女の横を通りすぎ、フェンスの前に立った。
「智子には、黒幕の存在を君に話すと言った。
だから、智子の方が先に動くかもしれない」
それだけ言って、目の前のフェンスを乗り越えた。