満月~full moon~



「智子を殺すのはやめた方がいい。
君はこれ以上、罪を重ねちゃいけない」


「何を言っているの?
もう、あたしは戻れないのよ!?」



彼女は、キッと俺を睨みつける。


確かに、彼女の言う通りだ。

今更だと思う。

だけどなぜか、彼女には幸せになって欲しいと思った。

彼女の本心を、垣間見たせいか。


ただ、これ以上言っても彼女は素直に聴き入れることはないだろう。

だから、俺はゆっくりと彼女の横を通りすぎ、フェンスの前に立った。



「智子には、黒幕の存在を君に話すと言った。
だから、智子の方が先に動くかもしれない」



それだけ言って、目の前のフェンスを乗り越えた。




< 103 / 137 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop