満月~full moon~



真下には、パーキングがある。

1台も停まっていない。


その様子を見てからくるりと回り、フェンスを掴みながら彼女を見る。



「俺が死んでも、君には手が回らないようにしてある。
これは、俺が罪から解放されるためにやることだから」



それから、1歩ずつ後ろへ下がる。

そして、フェンスから手を離し、ギリギリの所に立つ。



「最後に、君には幸せになって欲しいと思うよ」



その言葉と一緒に俺は、背中からゆっくり落ちていった。

それなりの速さで落ちているはずなのに、風景がスローモーションに見えた。


これで、肩の荷が下りた。

全てから解放される。

今更で、自己満足ではあるけど、これで良かったんだ。




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